2022年05月08日00時12分掲載
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欧州
「21世紀の資本」の著者トマ・ピケティが左派の野党共闘を歓迎 ルモンドの報道
「21世紀の資本」でフランスの経済学者、トマ・ピケティは、今日、投資や不動産による収入を得ている人々は賃金労働者よりもはるかに富を増していく理由を明確に示した。
「過去200年以上のデータを分析すると、資本収益率(r)は平均で年に5%程度であるが、経済成長率(g)は1%から2%の範囲で収まっていることが明らかになった。このことから、経済的不平等が増していく基本的な力は、r>g という不等式にまとめることができる」(ウィキペディア)つまり、資本収益率の方が経済成長率よりも高ければ経済的不平等は増していく。この場合、rは利息や配当金、利潤などによるものであり、gは給料などによるものである」
2013年にフランスで刊行された「21世紀の資本」は世界的に大ヒットを記録し、折しも2011年から始まっていた「ウォール街を占拠せよ!」などの格差是正の運動にも大きな知的刺激を与えることになった。当時を振り返れば世界恐慌となったリーマンショックの原因が米国(と欧州・日本)の金融の変化にあったことである。このピケティが、先日、フランスで成立した左派の野党共闘にエールを送っており、ルモンドでも紹介されている。
https://www.lemonde.fr/idees/article/2022/05/07/thomas-piketty-le-programme-adopte-par-les-partis-de-gauche-marque-le-retour-de-la-justice-sociale-et-fiscale_6125101_3232.html
この記事で、ピケティは6月に行われるフランスの国民会議議員選挙を前にした左派の野党共闘の共通政策について、過激だと言って批判する保守メディアがあるが、<実際には、むしろ、これほどつましいものはない>と言っている。様々な温度差のある左派政党をまとめるための<出発点に過ぎない>と考えているのだ。ピケティによると、1936年のフランス人民戦線時代の左派の共闘や、1981年のミッテラン大統領を生んだときの共闘の内容に比べると、随分穏健なのである。
ピケティは自分がそれを「穏健」だという根拠として、2010年から2021年までの貧富の格差を見れば、いかに「穏健」かは一目瞭然だとして、フランスの富全体に占める大富豪と富裕層が独占する%を提示して見せた。実際驚くべき伸び率となっている。しかも、この期間は、最初は右派政権のサルコジ大統領の時代だったが、2012年5月以降は社会党のフランソワ・オランド大統領と、オランド大統領が抜擢して政界デビューさせたマクロン大統領の約10年と言ってよい。その意味で、服従しないフランスを盟主にして結ばれた今回の左派の野党共闘が持つ意味は、極めて大きいとしているのである。とくに新型コロナウイルスのもとで格差は拡大しているのだから、その意味でも富を急増させた大富豪から富を社会へ還元させなくてはならないと訴えている。そして、まず何よりも貧困層や庶民の暮らしを直撃しているインフレを止める手立てが必要だというのである。
日本では今年の参院選を前に野党共闘が低調になっており、32の一人区の候補者一本化も、これまでのようにはできていないと報じられている。野党共闘がなぜ生まれたかと言えば、小さな野党が党利党略に追われてばらばらで戦っていては、小選挙区制では勝ち目もなく、政治の主役である有権者のためになっていない、ということにある。
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