2022年07月05日08時35分掲載  無料記事
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政治

【参院選】各政党の移民政策を考える

 7月10日に投開票が迫った参院選。国政選挙であるため、外国籍の人々は投票権を有しておらず、そのためこのような人々が関わる移民政策などは大きな争点にはされづらい傾向にある。しかし、今の日本社会は様々な場面でこのような外国籍の人々に支えられており、その繋がりは欠かせないものとなっている。昨年夏には国民の声を受ける形で政府主導の入管法改正案が廃案となったが、これも「日本人さえ良ければいい」という風潮から「外国籍の人々にも人権を」と日本社会全体の意識が国際標準に近づいてきたことの現れであろう。このような流れにある中で、各政党は日本の移民政策の現状と今後をどのように捉えているのか。参院選後の情勢を踏まえながら考えたい。 
 
 「移住者と連帯する全国ネットワーク」(移住連)が6月20日に公表した「移民政策に関する政党アンケート」では、与野党9政党(自由民主党、公明党、立憲民主党、国民民主党、日本維新の会、日本共産党、れいわ新選組、社会民主党、NHK党)に対して、移民政策に関する問いを投げ掛け、設問ごとに各政党の回答を取りまとめている。https://migrants.jp/news/voice/20220710.html 
 
 この中では、例えば「技能実習制度を廃止すべき」という設問に関しては、立憲、共産、れいわ、社民が「賛成」とした一方で、自民、公明、国民民主、維新、NHK党は「どちらでもない」という曖昧な回答をしている。そして、「特定技能労働者に滞在一年目から家族帯同を認めるべき」という設問に対しては、共産、れいわ、社民が「賛成」とする一方で、自民、NHK党が「反対」と答えている。 
 
 また、「送還忌避罪や送還停止効の例外措置を認める入管法案は再提出すべきでない」との設問に対しては、共産、れいわ、社民が「賛成」としているのに対して、自民、維新は「反対」と回答している。また、「入管施設への収容は司法の判断を必要とし、最長期収容期間を設定する」との設問には、共産、れいわ、社民、維新が「賛成」している一方で、自民、NHK党は「反対」している。「入管法から独立した難民保護法を制定すべき」という問いについても、概ね同様の傾向にある。 
 
 これらの設問は、前段は「技能実習・特定技能制度」、後段は「入管政策」に関するものであるが、概ね共産、れいわ、社民は現状の制度を改善すべきであるとしており、立憲もこれに近い。公明、国民、維新などは「どちらともいえない」という回答が多く、自民、NHK党は現状の制度の変更には全体的に消極的である。 
 
 今回の参院選後には、技能実習生制度や特定技能制度の見直しを控えており、古川禎久法務大臣は6月末の記者会見で「(技能実習制度見直しの)論点を7月に発表する」とも語っている。昨年廃案となった政府主導の入管法改正案についても、秋の臨時国会での提出が噂されており、参院選の結果に応じて、これらの制度に対する政府の対応も変化すると見られる。 
 
 少子高齢化が進む日本社会において、様々な国籍の人々と協力して社会全体を支える「共生社会の実現」は必要不可欠なものとなる。そのためにはどのような施策を講じるべきで、各政党はどのような姿勢でこの問題に取り組んでいるのか。参院選に合わせたこのタイミングで改めて確認して頂きたい。 


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