2022年07月24日10時41分掲載  無料記事
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政治

安倍元首相の”レガシー”が岸田首相を襲う

  菅首相から岸田首相に替わったのは2021年9月。まだ1年も経過していない。菅首相(当時)は安倍首相(当時)の官房長官であり、いわば「顔」でもあった。だから「桜を見る会」のスキャンダルは菅首相にも影響を与えた。しかし、昨年9月の自民党総裁選は実に巧みだった。自民党はアメリカ大統領選の予備選挙に似た総裁選をTVで行い、あたかも、自民党という一党の総裁選〜国民の大半には投票権はない〜が日本の首相選であるかのような印象を与えたのだった。といっても、それはまったく表層のイメージだけで、米大統領選のような長期間の選挙プロセスもなければ国民との対話もなかった。それでも日本の有権者にはなんとなく、総選挙はもう終わったような感じを持った人も多かったのではなかろうか。 
 
  岸田首相は最右翼の安倍首相から見れば党内左派であり、最も野党に近い立ち位置の政治家だった。自民党にとって、そんな岸田氏を首相に選出することこそ自民党のイメージ回復に必要だった。憲法改正を今する必要はない、と従来から何度も述べていきた岸田氏である。有権者はこれに安心して、その直後の衆院選で岸田政権を支持していることを表現した。「桜を見る会」のスキャンダルや菅首相の不人気などが加味され、自民党は276議席からどこまで議席を減らすかと見られていたが、ふたを開けてみると261議席を得て、減少はわずか15議席にとどまった。一方の立憲民主党は政権交代どころか、前回の109議席から96議席へと減少したのだった。そこで野党第一党の立憲民主党の党首は交代となった。本来、野党にとって最大のチャンスとなるはずだった2021年の衆院選は、野党の敗北に終わった。 
 
  しかし、岸田首相に今、テロ事件で亡くなった安倍首相と統一教会の関係が思わぬ火種となって迫っている。岸田首相は改憲に対する声明を一転させ、改憲に前向きな姿勢を表している。だから有権者の岸田首相を見る目は明確に変わった。そこに追い打ちをかけるように、岸田首相が閣議決定した安倍首相の9月の国葬の計画が、過去の安倍政権時代の様々な記憶を多くの人に想起させている。2021年の総裁選で過去のスキャンダルの数々を白紙に戻したかの自民党にとっては再び、不安な状態が加速していく可能性がある。 


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