2022年08月04日20時48分掲載
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検証・メディア
「7月9日の朝刊」は戦争報道におけるメディアの翼賛体制が完成したことを示す
安倍首相暗殺の翌朝の主要新聞の見出しが全部同じだったことは、有事の際の報道統制がすでに完成していたことを象徴的に見せたものだと私は解釈したと書きました。実際にそうだったかは各新聞が検証しないと事実はわかりませんが、読者として外から見る限りそう見ざるを得ません。ですので、各社の検証を待ちます。今、主要メディアがいくら良い報道を繰り広げていたとしても、肝心な時に黙ってしまう可能性があるますし、戦争となれば自衛隊も出動して死者も出るでしょうから(※)、もっと緊迫するわけですから、もっと統制されるでしょう。
このことにこだわる理由は、太平洋戦争まで続く15年戦争(1931年の柳条湖事件から1945年の敗戦まで)の発端が1931年9月18日の鉄道爆破事件にありましたが、これは張学良ら中国の東北軍の犯行であると当局から発表され日本でもそう報道されたことにあります。実際には日本の関東軍による謀略とされています。そのことがあるので、7月9日の朝刊は重大な状況に陥ったことを示しているのだと私は考えます。メディア各社でよほど人事の刷新とか、検証が行われないと、あの日に確立したと思われる戦時中と同様の体制翼賛的報道の体制は今後、揺らぐことはないでしょう。
この柳条湖事件がきっかけとなって、日本軍による占領と満州国の建国、ひいては対中・対米戦争、そして原爆2発と都市への焼夷弾投下によって壊滅的な日本の敗戦、無条件降伏へとつながっていきました。1発の銃弾、1発の爆弾、1発の魚雷攻撃であれ、その正確な事実を報じることは何十万、何千万人の命に匹敵する価値があることです。ですから政府が有事と判断したとしても、報道が自主統制され核心的事実が検閲あるいは自主検閲で国民から伏せられてしまうことは国民を再びどん底に陥れる危険があります。一番重要なのは発端の報道です。なぜなら、その情報が多くの人の未来を左右することに不可避的になるからです。
戦後、日本の報道メディアは、戦時中のような報道は二度と繰り返さないと誓ったはずなのです。これは日本だけの問題ではありません。ベトナム戦争の際もトンキン湾で米艦船が北ベトナムの哨戒艇から魚雷攻撃を受けたという口実で米軍の戦争が開始されましたが、これは米軍の謀略だったという事実がペンタゴン・ペーパーズのリークで後に報道されました。過去の謀略によって始まった戦争で命を落とした人々を犬死にさせてはなりません。
これらのことを考えれば、戦争の発端の検証と報道はジャーナリズムの最も重要な局面といえます。そして、7月9日の検証が必要である理由は安倍首相の暗殺事件が、戦争の発端のおそらく延長線上に位置すると政府やメディアに判断された事件であったろうからです。さらに、NHKが指定された公共報道機関として政府報道発表を無批判に送信する内閣官房の広報機関になるであろうこともすでに見えました。今回の件で、政府は主要メディアのコントロールは楽勝だと気がついたはずです。参院選挙後に初めて「旧統一教会」という名前がメディアで報じられるようになりましたが、これは時局が(想定)有事から平時に投票日の翌日、切り替わったからだと思います。ですので、今、いくら報道が進んだとしても、戦争の発端という最も正確かつ敏速な報道が必要な時に、何一つ真実を国民に与えない翼賛体制が完成したであろうことは、この国に在住する全市民の運命が極めて危険な水域に入ったことを意味していると思います。ひとたび大きな戦争が始まれば、有事の解除はおそらくないからです。
村上良太
※イラク自衛隊は「関東軍」だった! 「あえて巻き込まれ」戦争状態を作り出すつもりだったと佐藤氏(日刊ベリタ:大野和興)
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「戦前、中国東北部に派遣された関東軍が当時の日本政府の意図を無視して勝手に軍を動かして戦争状態を作り出して戦線を拡大、それがアジア太平洋戦争にまでつながったのは歴史的事実だが、今回の参議院選挙で選出されたばかりの元サマワ先遣隊長の佐藤正久参議院議員がTBSの報道のなかで、イラクに派兵されていた時に、自衛隊を現地で戦争状態に突入させるつもりであったと語った」
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