2022年08月23日08時16分掲載
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政治
米国を批判しても、すぐに反米を意味するわけではない 〜ホワイトハウスへの盲従を捨てることが日本再生の一歩〜
私は将来起こりうる対中戦争で米国が戦線離脱する可能性を示唆して日米同盟に水を浴びせるようなことを書いたりもしていますが、だからと言って米国が嫌いなわけではありません。むしろ米文化の愛好者です。ただ、日本が独立国であるならば、日本人の運命を盲目的にホワイトハウスの方針に追随して賭けることはできないと考えます。
冷戦終結後の日本ではイエスかノーか、二者択一の発想が支配的になっていますが、もっと多重の思考をしないと多極化する時代を乗り切ることはできません。二者択一的思考とは、「この道しかない」というような発想で、そのように決めたら、柔軟さを失ってしまいます。多極化の時代には選択肢を失ったものは敗者になるでしょう。米ソ冷戦の時代は米国のイエスマンで良かったのでしょうが、今、そのようなことをしていると、敗者になる運命しか残されていません。
米国がたとえ集団的自衛権をもとに中国と開戦したとしても一国だけで離脱してしまう可能性があると私が考える理由は、たとえば米大統領選で発想の異なる大統領が誕生した場合が考えられるからです。たとえばトランプ元大統領とバイデン大統領では、外交に対する考え方が典型的に異なっています。これはトランプ元大統領が大統領就任前に最初に指南を受けた外交専門家がキッシンジャー元国務長官であったことに象徴されます。キッシンジャーは理想を追求する警官型の外交ではなく、力の均衡を重視する19世紀欧州型の外交を旨とする人物であり、だからこそ中国と国交を回復しましたし、のちには中国政府の顧問でもありました。一方で、バイデン大統領は民主党の伝統である世界の警察官型の外交を行っています。ただし、米財政が貧乏になっているため、昔のように米兵を大量動員することは不可能になっています。このように米国では政権交代のメカニズムが機能しているために、明日のわからない米政府の外交に100%日本の運命を託すことは愚かなことなのです。アイゼンハワーやケネディの時代は共和党と民主党はまだ共通点が多々ありましたが、今日の米二大政党はかなり距離が開いてきていますので、そういう意味でもリスクが高くなってきています。米国の利益と日本の利益は異なることを常に考慮することが必要です。米国自体が揺らいでいる今、米国をいつでも頼りになる強いお父さん、とみなせた時代ではすでになくなっているのです。
私見では発想の硬直化こそが北方領土の返還を安倍政権が実現できなかった理由ではないかと思います。ロシアに北方領土を返還させるには、ロシアの言い分を受け入れて、日米安保条約を変化させる必要があったでしょう。日本が独立国家としてイニシアティブを握り、北方領土に米軍基地を作らないことをプーチン大統領に確約できていれば北方領土が返還された可能性があったのではないのでしょうか。外務官僚や政治家が日米安保条約という常識を一度忘れて考えられなかったために、新しい時代を拓く可能性を実現できなかったのです。このことは今、旧統一教会の問題が浮上していますが、イデオロギーや教義に縛られてしまうと、柔軟な思考を展開することは不可能です。プーチン大統領とあれだけ親密にしながらも、安倍元首相は旧統一教会と同様に、反共・反ソ的思考形態から逃れられなかったのかもしれません。ロシアと交渉をしたからと言って、米国と関係を切る必要はないのです。日米安保条約に関しても、すべてかゼロか、だけではなく、もっと主体的にいろいろな交渉ができるはずです。今、我が国に問われているのは主人の言いつけを忠実に守る忠犬になることではなく、柔軟に国の進路を取りうる主体性でしょう。
岸田首相の支持率が下がっている背景には、統一教会がらみだけでなく、このままずるずる主体性を失って日本が悲惨な運命に陥っていく未来が岸田首相の主体性の乏しいパフォーマンスから垣間見えたからだろうと私は思います。今、日本は中国や北朝鮮、ロシア、米国に挟まれ、平和と繁栄を維持するためには、ますます狭い道を通らなくてはならない海峡に近づいていると思います。そこを無事通過するためには主体性なき政治では不可能です。米国が押し付けてくる二者択一に無批判に追随してよい時代はもうとっくに終わっているはずです。
■ニュースの三角測量
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■ニュースの三角測量 その2
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