2022年09月17日07時51分掲載
無料記事
http://www.nikkanberita.com/print.cgi?id=202209170751586
検証・メディア
フランスの「メディアパルト」(Mediapart)の有料講読を始めました 共同創刊者・編集長のエドウィ・プレネル氏からの手紙
私は今年、フランスのメディアパルト(Mediapart)の有料講読を始めました。この媒体については日刊ベリタでも何度か言及したことがありますが、ルモンドの編集主幹をしていたジャーナリストのエドウィ・プレネルが独立して仲間と創刊したインターネット新聞です。プレネル氏は権力を監視するのが新聞の使命であることを理解し、ルモンド在籍中も国家機密機関による犯罪の検証報道で名が知られた敏腕記者でした。私がその名を初めて知ったのは、飛幡祐規訳で「五百年後のコロンブス」というプレネル氏の著書を読んだ時でした。この本はコロンブスのアメリカ大陸「発見」から500年後を記念して(1992年)、発見されてしまった新大陸とその周辺地域がどのような歴史をたどって来たのかを、現地を旅して発見していくルポルタージュで、非常に興味深く読んだことを覚えています。
その後、プレネル氏は籍を置いてしかるべき地位にあったルモンド紙から飛び出して独立メディアを作ったことに驚きましたし、尊敬の念すら覚えたことを覚えています。メディアパルトが立ち上がった時(2008年)のフランス大統領はサルコジでしたが、その前年にあたる2007年の大統領選の際の違法な選挙資金に関する報道や、さらにそれと関連してリビアの当時の元首だったカダフィ大佐との闇についてスクープを連発し、ついにサルコジ大統領の再選の障壁となっただけでなく、刑務所へ送る源になったことはフランス人にとっては記憶に新しいことです。まさに日本の新聞に〜メジャーであれ、マイナーであれ〜そこまでの徹底さで実現できなかった権力監視の実践です。例えてみれば現職の首相の再選を阻んだのみならず、刑務所に送ったのに等しいことを成し遂げたのでした。近年の日本のメディアが束になってもできなかったことを小さな独立メディアで成し遂げ、その可能性を自ら切り拓いたのです。
以下はプレネル氏が講読を呼びかけているYouTube動画です。メディアパルトがつかんで報じたスクープは調査報道のプロフェッショナルの調査チームが何か月も根気よく取材を続けて初めてできたことで、メディアパルトがなかったら皆さんは知ることができなかったことです、と語りかけています。さらに、広告なし、国の補助金なし、大企業の資金なし、株主の圧力なしで初めてそれは実現できることで、だからこそ、皆さんの支援が不可欠なのです、と。実はメディアパルトは紙媒体でなく、ウェブメディアであることでYouTubeに依存しなくても自らのサイトで動画によるインタビューも配信していますし(もちろん、日本からも視聴できます)、大統領選などの選挙でもその存在感を示しています。今日のマスメディアの問題がどこにあるのか、自らの賭けと行動をもって端的に示した動画と言えるでしょう。日本のマスメディアにも当てはまることは言うまでもありません。メディアパルトはおろか、ニクソンを辞職に追い込んだワシントンポストと比べても、日本の主要新聞にはそのような覇気はありません。むしろ、ニューヨークタイムズやメディアパルトが日本法人を作って、やる気のある日本人の優秀な記者を雇って少数精鋭の10数人の合同チームで、日本人向けに新たに新聞を作って全力投球させる方が良いかもしれないくらいです。
https://www.youtube.com/watch?v=B8Q35a1PK0c
9月24日にメディアパルトは記者・編集者と読者との交流の場を設けるとしています。私はプレネル氏の名前で先日、以下のメールをいただきました。以下は拙訳です。
こんにちは 村上良太さん
あなたは講読することで、民主主義にとって欠かせない独立した新聞を勇気をもって応援する賭けを行われたのです。私たちの政治システムには皆様の貢献を得て反権力の営みが行われる必要があります。皆様の支援を得てメディアパルトはその役割をしっかりと果たすことができるのです。
恐らく、あなたがメディアパルトを選ばれた理由もそこにあるのでしょうか?私たちは、もし、あなたが時間を割いて(シンポジウムに参加)いただけるとうれしく思っております。私があなたの質問にお答えいたします。
メディアパルトは2008年に創刊されて以来、いかなる妥協も存在しない独立メディアとしてモデルを作り、メディアの世界の中で例外的な存在となったのです。
・広告ゼロ
・国家による援助ゼロ
・グーグルからもフェイスブックからも補助金ゼロ
・株主ゼロ
メディアパルトについてもっとお知りになりたければ、今日その歴史を理解いただけるでしょう。いかにメディアパルトが独立を守って来たのか。昨年3月の13回目の私たちの会計報告もご覧いただけます。ぜひメディアパルトをお読みください。そして、あなたを歓迎いたします。
エドウィ・プレネル
メディアパルト共同創刊者・編集長
Bonjour Ryota Murakami,
En vous abonnant, vous faites le pari audacieux de faire vivre une presse indépendante, indispensable à la démocratie. Notre système politique a besoin que s'exercent des contre-pouvoirs, et grâce à vous, Mediapart peut assumer pleinement ce rôle.
Peut-être est-ce la raison pour laquelle vous avez choisi Mediapart ? Nous serions heureux d'en savoir plus, si vous disposez de temps :
Je réponds au questionnaire.
Depuis sa création en 2008, Mediapart est une exception dans le paysage médiatique grâce à son modèle d'indépendance, sans aucune compromission :
• sans publicité
• sans aide de l'Etat à la presse
• sans subvention de Google ou Facebook
• sans actionnaire
Pour en savoir plus sur Mediapart, découvrez aujourd’hui l'histoire de votre journal : comment Mediapart a rendu son indépendance irréversible, ainsi que notre bilan publié en mars 2021 pour notre 13ème anniversaire.
Bonne lecture et encore bienvenue parmi nous,
Edwy Plenel
Co-fondateur et directeur de Mediapart
Copyright (C) Berita unless otherwise noted.
日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。