2022年10月20日05時14分掲載
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欧州
フランス議会:来年の予算案審議で首相が反民主的な49−3を適用
フランスのメディアが今華々しく報じているのは予算案をめぐる下院での議論で、エリザベット・ボルヌ首相が49−3(憲法49条3項)を適用して、議論と多数決という国会のプロセスを一方的に打ち切り、法案(今回は予算案)を力づくで通してしまったことである。これはフランス憲法に規定のある方法だが、極めて反民主的な方法であり、非常手段ということで野党からは非難が飛んでいる。
今年の下院議員選挙で過半数を割り込むなど、議会運営が格段に厳しくなったマクロン大統領の与党「共和国前進」にとって、どうしても通したい予算案だったのだろう。マクロン大統領がフランス社会党のマヌエル・ヴァルス首相の内閣で経済大臣をやっていた頃は、ヴァルス首相が労働法改正案をめぐって何度か49−3を行使したことが記憶にあるはずである。ヴァルス首相の時も独裁政権という非難が政府に浴びせられたものだったが、今回もまた49−3である。
野党共闘の柱である「服従しないフランス」(LFI)の党首ジャン=リュク・メランションはこれを「49ー3が適用されたため、国の予算案が議決されることはなくなった。大統領的な君主は〜たとえ議会で採択されたとしても〜自分たちに都合よく、他者を破壊する予算案を49−3を使って力づくで通すことを選択した。権力の極みだ。彼らが湾岸の君主制国家群に惹きつけられる理由が理解できる」とツイートした。
社会党第一書記のオリヴィエ・フォールは「驚くことではない。そもそも議論自体が始まっていなかったのだ。政府はすでに49条3項のことを語っていた。政府はみじんたりと妥協する道を探すことはなかったのだ」とツイートした。
大山礼子著「フランスの政治制度」(東信堂)によると、49条3項は「法案に政府の信任をかける手続」と呼ばれている。
「政府は下院での法案審議に際し、法案の評決に政府の信任をかけることができる。この場合、24時間以内に不信任案が提出され、過半数の議員の賛成によって可決されない限り、法案は可決したものとみなされる(2008年憲法改正により修正)」
野党共闘の中心となっている服従しないフランスの下院議員代表マチルド・パノ(LFI所属議員)が、政府への不信任動議を提出すると語っていたので、多数決が行われるはずである。もし政府への不信任が多数となれば内閣は総辞職しなくてはならなくなる。パノ議員は「フランス人の3分の2は49条3項の行使に反対しています」と記者会見で述べた。
■物価高や気候変動への無策に対するパリのデモ(2022年10月8日)
https://www.youtube.com/watch?v=X6KQpQ5_s4c
ユーロニュースによると、14万人が参加した。エネルギーだけでなく、野菜などの日常品が高すぎると訴えている。もし、子供がいたらとても養えないだろうという人も。
■大山礼子著 「フランスの政治制度」(東信堂) 49−3とは何か
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