2022年10月26日12時11分掲載  無料記事
http://www.nikkanberita.com/print.cgi?id=202210261211333

政治

政治家・政党とジャーナリズム  絶対権力を作り出さないために

  安倍元首相のスキャンダルとなった「桜を見る会」に関するスクープは共産党の赤旗新聞で、赤旗は与党の腐敗を暴く優れた報道を行ってきました。また、政治記者・鮫島浩氏のSAMEJIMA TIMESもまた、与党に対する鋭い指摘をしながら、れいわ新選組を応援しています。鮫島氏がどこかで書いていたと記憶しますが、ジャーナリズムが特定の政党を応援することは欧米のジャーナリズムではあります。実際に、ニューヨークタイムズも民主党を応援するばかりでなく、2016年の米大統領予備選ではヒラリー・クリントンを応援していました。そのことはニューヨークタイムズが正々堂々と社説でも打ち出していたものです。そして、トランプ候補のちにはトランプ大統領に対しては、戦争とも言えるほどの厳しい批判的記事を浴びせてきました。むしろ、日本のメジャー新聞の場合の、中立を装いながら、実態としては与党に寄り添っている疑似中立の方がはるかに病理なのだ、といったことを鮫島氏は指摘されていたと思います。 
 
  暴言の責任を取って辞任した明石の泉市長に対する鮫島氏の政治コラムでは、泉市長に対する敬意を込めながらも、暴言に対しては厳しい言葉を添えており、その距離の取り方は素晴らしいものだと感じました。応援している政党や政治家に何か問題が発生した時に、NHKの解説委員だった岩田明子氏のように「べったり」になってしまうと、ジャーナリズムとしての意義を失ってしまいます。 
 
  赤旗の場合は逆に、共産党が野党の時代こそが華かもしれず、果たして、共産党が与党になって権力を行使する側になった場合に、赤旗がこれまで自民党に対して行ったようなジャーナリズムが発揮できるか、そこが問われることになります。その時こそが赤旗の本当の力が試されるときと言って過言ではないでしょう。 
 
  このことと通底しますが、与党の支持者は自民党を応援するだけではだめで、小選挙区制を作って二大政党制を目指したのなら、政権交代が起きることを良しとする度量が必要だと考えます。でないと絶対権力は絶対的に腐敗する、という政治学の第一原則を見過ごしてしまいます。政権交代が起こらなければ官僚たちは権力に媚びを売り、メジャーなメディアも権力におびえて、ひれ伏してしまいます。その結果の1つが、旧統一教会との癒着がメディアから看過されてきたことでしょう。この件は自民党支持者にとっても、絶対に無視できない重大な疑獄のはずです。自民党の議員たちが韓国のカルト教団と関係を結んでいたことは日本の安全保障と平和、そして外交に大きなリスクを与えるものだからです。もし安倍首相が狙撃されていなかったら、今でも関係を継続していたでしょう。それは自民党がますます劣化していく道でした。 
 
  政権交代が起きれば、こうしたことにもチェックが働きやすくなるはずです。内閣法制局も正常化できるでしょう。官僚たちの公文書改竄や改竄統計の国会提出も終わらせることができるはずです。こうした腐敗した事象は先進国のものではありません。すでに日本は権威主義国家ですが、放置するとますます悪化して回復不可能な一線超えます。経済的にも下落しますが、外交の面でも愚かな交渉で北方領土が返還不能になってしまったように、ただただ悪化するのみです。こうした腐敗に対しては、与野党を超えて民衆のパワーを集中して打倒する必要があります。ただし、ここで重要なことは個々の政党や個々の政治家よりも、まず土台にある構造=ストラクチャーを与野党を超えて健全化する必要があるということです。この社会の基礎にある構造が液状化したままでは何をやっても、一歩も前進できないでしょう。 
 
  ジャーナリズムの意義も、絶対権力にならないように権力を監視することにあります。逆に、有権者であれジャーナリストであれ、たとえ野党支持だとしても、自民党が消えればよい、というよりは自民党が健全化することの方が、絶対権力を避ける意味では重要であるはずです。野党も政権を取れば絶対権力になる可能性があります。その意味で、与野党を超えて権力を拮抗させ、牽制させあうという知恵を戦略的に持つ必要があると思います。政治も報道も自分たちのチームだけが生き残ればいいのではなく、敵側も同時に健全に生き残ることだけが、絶対権力の悪夢を免れる鍵です。敵側が健全であることは自分たちが健全であるために必要です。これはそういう政治のストラクチャーを基底に持つことが重要で、個々の政党の活動はそのストラクチャーの上に乗ったものだという認識が大切です。報道も政治も、基底にあるストラクチャーが健全でないと、何を地上に作ろうと、砂上の楼閣に過ぎません。ここに日本の最大の課題があると思います。 
 
 
 
■モンテスキュー著「法の精神」 〜「権力分立」は日本でなぜ実現できないか〜 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201312260209124 
 
■大手広告代理店とマスメディアと政府  「第四の権力」も独立を 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=202006120051445 
 
■ジョン・スチュアート・ミル著「自由論」 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201306171108171 
 
■アル・パチーノ監督の映画「リチャードを探して」   最良のシェイクスピア入門 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201110020207200 


Copyright (C) Berita unless otherwise noted.
  • 日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
  • 印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。