2023年02月01日13時46分掲載
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欧州
フランス人が大規模な年金改革法案反対デモに託した思い
フランスで昨日、歴史的な規模の市民のデモが行われました。パリ現地時間の31日の朝からツイッターでも続々と各地での参加者の模様と参加人数が報じられていきました。どこどこで3000人、どこどこで何万人という具合です。ともかく、昨日のデモは動員の数が大きな目標になっていたことは間違いありません。社会党第一書記のオリヴィエ・フォールは「これなら成功と言えるだろう」と日中、ツイートしました。実際、主催者の1つでもある労組CGTは全国で参加者は280万人と発表しました。フランス内務省は128万人と約半分の数字を掲げ、日本のメディアは主催者ではなく、取り締まる側の内務省の数字をそのまま記載していました。
22歳で、フランス本土では最年少で下院議員に当選した(選挙の時は21歳だった)大学生で、LFIのルイ・ボヤール議員によると、200もの高校で学生たちが学校を封鎖したほか、数十の大学でも学生たちが抗議に参加したとされます。すなわち、年金改革法案は若者たちにとっても重大な問題だという風に認識されているのです。決して高齢者や年配世代だけの目先の問題などではありません。
そして、もう1つこの抗議デモを成り立たせたのは、マクロン大統領のもとで首相になったエリザベト・ボルヌ首相が国会で49−3という非民主的な手法を用いて予算案や法案を次々と強引に成立させてきたことへの怒りがあるのだと私は想像しています。この49−3というのは憲法49条3項の規定で、下院の議決をしないまま、首相が内閣の信義をかけて一存で法案可決させてしまう、というものです。もちろん、それは歯止めがないと独裁になりますので、一応、49−3が適用されてから48時間以内に内閣不信任案が野党から提出されて、もし議員の過半数が不信任案に賛成したら内閣は解散しなくてはならないのです。ボルヌ首相がこのような非常手段を連発しているのは、昨年の下院議員選でマクロン大統領の新党が議員数を減らして過半数を割り込んでしまったことが響いています。これはフランス版野党共闘の成果でした。
そして、ボルヌ首相は放置しておくと、年金改革法案すらも49−3を使って、国会での議決をすっ飛ばして通してしまいかねない、という不信感あるいは不安感から、労働者や市民は国会以外の場で、民衆の力を示す必要がどうしてもあったのです。若者たちも多数参加しているフランス人のこうした闘いを見れば、フランスでは政治を人々が変えていけるという信念が生きていることがわかります。
■日本の大メディアによる、フランスの年金改悪反対デモの伝え方 朝日新聞もNHKもデモへの冷笑的視点で描いてきた
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