2023年02月28日09時05分掲載  無料記事
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コラム

メディア統制の結果が情報不足による国力の低下へと今後ますますなっていくだろう

  近年、TVメディアはかつて信じられていたような情報産業ではなく、ファッション産業に変異している。ファッション産業というのは多少単純化することになるが、一言で言えば、確たる知識・情報よりも、オシャレであるかどうかをモノサシとする変化である。では、かつて日本のTVはそんなに優れた情報にあふれていたのか?そこは検証の余地があるとしても、少なくとも優れた情報を得るために、製作者たちはしのぎを削っていた。しかし、今日、国や財界から統制されたり放送局が権力者を忖度したりするようになると、もはや情報産業であり続けることはできなくなったのだ。 
 
  これが何を意味するかと言えば、調査報道番組が減少したり、優れた報道をするスタッフが解雇されたり、チームが解体されたりすることで、産業界における情報収集力が低迷するということである。その影響力は産業界だけにとどまらない。そこで番組制作予算を投入して収集された情報は、国家機関・政府・官庁にも還元されていくものなのである。逆に言えば、報道を統制すればするほど、情報力で米国と格差が広がっていく。米国では海外取材をした記者が帰国した時、国家情報機関のスタッフから得た情報についてインタビューされなかったら恥ずかしいと思っていたくらいだという。国際報道を中心とした情報格差は日本の属国化をますます強固にする。そして、グローバル化した今日、国際報道は国内報道と結びついているものなのだ。すなわち、TVメディアのファッション産業化はまわりまわって、国民が未来を見据えて生き延びる可能性を狭め、あるいは閉ざしていくことになる。しかし、業界的にはファッション産業化によってかつてならありえなかった序列が作り出され、モノサシはまったく違ったものになっている。ガリヴァー旅行記にも似た、こうした事態は、もし幕末の志士たちが今日生きていれば、大きな危機感を感じたことだろう。 
 
  フランスの作家ボリス・ヴィアンの戯曲に『将軍たちのおやつ』という作品がある。そこでは将軍たちと親しい政治家が情報統制をし過ぎたために新聞紙面が真っ白になって何の情報もないのだ。新聞は真っ白だ。将軍たちは信頼できる情報が何一つないまま、次の戦争の相手を議論しなくてはならない。失政をごまかすために戦争が必要だからだ。ブラックユーモアだが、今日の日本はまさにこんな世界になっているのである。プーチン大統領と何十回会って話し合っても北方領土問題が何一つ解決できなかったばかりか、二度と解決できないものになったのも、TVのファッション産業化のおかげである。しかも、かつて安倍首相と親しかったNHKの某解説者のように、政権がどんなに無能でも、スタジオでほめまくる一種の「親衛隊」まで日本のTV産業は創り出してしまった。こんなことを続けていれば日本はますます堕ちていくだけだ。政教分離と同様に、お笑いと報道とを分離することも必要だ。情報は一国の運命を左右するものである。今のTV産業は異常であることを包み隠す装置=ブラックボックスである。 


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