2023年03月09日11時14分掲載
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反戦・平和
歯止めのかからない日本の軍拡〜外務省が他国軍への武器供与に20億円を計上〜
外務省が「日本の抑止力向上」を名目に、同志国とされる国々の軍に対し、防衛装備品を無償で供与するという前代未聞の“支援策”が動き出そうとしている。
昨年12月、日本政府は「国家安全保障戦略」など安保3文書を改定。国家安全保障戦略とは、外交や防衛政策をまとめた国の基本方針のことだ。
今回、その国家安保戦略の中に「ODAを始めとする国際協力の戦略的な活用」として、「ODAとは別に、同志国の安全保障上の能力・抑止力の向上を目的として、同志国に対して、装備品・物資の提供やインフラの整備等を行う、軍等が裨益者となる新たな協力の枠組みを設ける」との記載が盛り込まれた。
要するに、「非軍事原則に基づく現行のODAでは軍事目的の支援ができないため、それを可能にする新たな枠組みを創設し、同志国とされる国々に対して武器を供与していく」ということだ。外務省はこの方針に基づき、2023年度予算案に「同志国の安全保障能力強化支援」として20億円を計上した。
こうした動きについて、紛争地での人道支援やアドボカシー活動を行う「日本国際ボランティアセンター」(JVC)の今井高樹代表理事は「国をあげて、同志国とされる特定の国々に無償で武器を援助していくということは、日本が持つ平和憲法の観点からしても信じられない」と驚きを隠さない。
これまで日本政府は、「非軍事原則」に基づくODAを中心に発展途上国への支援を担ってきた。たとえ相手国の軍やその関係者に対する支援を行う場合であっても、形式上は「防災」や「民生」目的とされた。
ところが、今回「ODAとは別の枠組み」(非ODA軍事支援)を新設し、その枠組みによって軍事目的での他国軍支援が可能となれば、これまで日本が堅持してきた「非軍事原則」を事実上、撤廃することになるだろう。
今井氏は「非ODA軍事支援では、軍事目的での武器供与が可能となるが、『防衛装備移転三原則』の中身を変えない限り、いわゆる戦車やミサイルといった殺傷能力のある武器を他国軍に供与することはできないだろう」としつつも、「これまでは、『防衛装備移転三原則』が歯止めとなり、政府はどういったスキームを使っても殺傷能力のある武器を海外に輸出することはできなかった。しかし、政府はすでに昨年末に改定した国家安保戦略の中で三原則の緩和を掲げており、春の統一地方選挙が終われば、武器輸出の全面解禁に向け、どんどん動いてくるだろう」と警鐘を鳴らす。
日本政府は「抑止力向上」を銘打った軍拡路線ではなく、今こそJVCはじめNGOが主張する「武力で平和はつくれない」の考え方を軸とした“平和外交”に舵を切るべきではなかろうか。
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