2023年03月15日23時18分掲載
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欧州
フランスの年金制度改革反対の最前線にAttacの女性たち〜替え歌とダンスで盛り上げ市民100万人単位の動員の起爆剤となる
フランスでは年明け早々、エリザベット・ボルヌ首相が年金制度改革案を発表して以来、反対のデモやストライキが再び盛り上がりを見せました。1月には控えめな内務省発表の数字でも全仏で100万を超える動員を繰り返し見せました。そして、3月7日に至っては主催者発表で300万人超の動員を見せており、CGTやATTACなどの主催団体は廃案に追い込む本気度を見せてきました。
この中で1つ注目されるのは、ATTACの女性グループを中心にしたLes Rosiesという替え歌とダンスで、年金制度改革案を批判する運動です。百聞は一見にしかず、で以下のYouTubeでご覧いただけます。この歌では年金制度改革の理由とされる資金難は起きていないことや、改革の狙いの裏に民間保険会社への便宜を図ろうとしていることなどがさらりと盛り込まれています。そして、この改革が女性や貧しい人々を死に追いやり、得をするのは富裕層だけだと説明し、私たちはただ生きるだけでなく、尊厳のある生き方をしたいと訴えかけています。
https://www.youtube.com/watch?v=zeCdcWcgTZY
こうしたユニークな運動が起きている原因は、この年金制度改革案の最大の標的が賃金や就職で差別されてきた女性であることです。そして女性は出産子育てで仕事から退くこともあって年金の払い込む年月が少なくなり、このシビアな年金制度改革案でますます高齢に至るまで働き続けないと満額を受給できなくなってしまいます。現状の62歳から受給開始年齢を政府は64歳にしようとしていますが、満期に達していない労働者は67歳あるいはもっと働き続けなくてはならなくなるのです。しかも、年金受給額の算定の仕方もパート労働者や非正規労働者にとって厳しい算定の仕組みになっていると聞きました。
マクロンがフランソワ・オランド大統領の時代に経済大臣をやっていた時から、警察・憲兵隊はデモ鎮圧にあたってゴム弾を多用し、失明者や障害者を多数生み出してきました。マクロン大統領になってもこの弾圧は続いており、デモに参加することは労働者や市民にとっては、衝突が起きるといつ失明するかもしれないような、緊張を伴うことになっていたのです。こうした空気が続くと、デモに参加する人も減ってしまいかねません。そうした中から生まれてきたのが人気のある歌の替え歌で、踊りやすいダンスをみんなで踊りながら、反対のシュプレヒコールにもなるという形態です。これはディスコのような、一種のストレス発散的な側面もあるように見えます。運動・闘争をそういう人間的なものに変えたのがAttac FranceのLes Rosiesだったのです。その中心メンバーの一人が山本百合さんで、日本人の父を持つフランス人女性です。これは3年前にも行われていたのですが、ニュースでも大きく取り上げられ、パリだけでなくフランス各地の女性たちがデモに参加する心理的な抵抗を下げるのに貢献したのです。そして、この参加者の中には現職の野党の女性議員の姿が何人かみられます。この反年金制度改革の闘いは、労働をめぐる男女の差別解消の運動という側面も見せています。
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