2023年03月16日22時44分掲載
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アジア
タイで王室や家父長制的政治を批判する中高生への弾圧が続く アムネスティが警告
タイで王室や家父長制的政治体制への抗議行動に積極的に参加した中高校生への弾圧が続いている。国際人権団体アムネスティ・インターナショナルによると、2020年から2022年にかけて展開された大規模な抗議行動は以前の抗議活動のときと違い、抗議活動の参加者の大多数は18歳未満の中高生で、彼らは、政治体制が家父長的で保守的だとして政治や社会、教育面での改革を訴えている。彼ら抗議デモに参加した中高生らに対する当局の逮捕、訴追、監視が続いており、アムネスティは当局に対し、未成年者への容疑を取り下げ、監視や嫌がらせをやめ、デモ参加の権利を認めるよう求めている。(大野和興)
アムネスティは2020年から2022年の大規模デモに参加した中高生ら30人から話を聞いた。その結果を以下のように報じている。
それによると、デモの中心的役割を担うのが、LGBTI(レスビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー、インターセックス)や先住民族、少数民族である子どもたちだ。
これまでに300人近くの子どもが刑事訴追されている。大半が、新型コロナウイルスのパンデミックで導入され、その後廃止された非常事態令の大規模集会に関わる規制違反に問われているが、扇動や王室を侮辱したと訴追され禁錮刑を受ける危機にある子どもたちもいる。タイで子どもが不敬罪に問われるのは初めてで「常軌を逸した弾圧である」とアムネスティは述べている。
当局は、中高生らの抗議活動を封じるためにさまざまな手段を使ってきた。日常的な監視、少数民族の子どもへの恫喝、素行調査中の同棲関係などの立ち入った質問などだ。
デモに参加した少女(13歳)は、「昨年3月に抗議を始めた時から当局員に付きまとわれている」と話す。LGBTIの活動家(16歳)は、通学路での尾行が続いたため、パニック発作、不眠などのストレスを抱え、心の健康を失ったという。
当局が児童保護法のもとで職権を乱用して、子どもたちが抗議活動に参加するのを不当に阻止した事例も数件ある。教育改革を求める活動をしていた1人の女学生は、友人とバンコクの民主記念塔近くのレストランにいた時、児童保護担当だという警官に強引に外に連れ出された。王室一行が付近を通過する際、2人が抗議デモをするおそれがあるとみなされたためだった。
当局が子どものデモ参加を阻止するためにその親に圧力をかけることもあり、その結果、家庭内に緊張が生まれ、家庭内暴力に発展した事例もあった。
アムネスティは2020年以降、抗議活動で安全性が確保されているかどうかを検証してきた。2021年には、抗議デモへの取り締まりが強化される中、デモ中の暴力行為が増えていた。
2021年8月、バンコクで日頃から抗議活動に参加する14歳、15歳、16歳の若者3人が何者かに銃で撃たれる事件があった。1人は首を撃たれ、意識不明のまま1カ月後に亡くなった。その後、検察の要求にも関わらず警察は証拠品を提出せず、捜査は大幅に遅れた。ようやく検察は市民の一人を殺人罪で訴追したが、いまだに裁判は始まっていない。
1 8歳未満の子どもたちを弁護している人権派弁護士によれば、逮捕時の拘束具使用や、殴打、抗議デモの取り締まり時のゴム弾使用など、警官による不当な扱いがあったという。2021年7月にバンコクのディンデン交差点付近であった反政府デモでは、警察は、12歳の参加者の拘束に結束バンドを使用したと報じられている。別のデモでは17歳の少年がゴム弾を打たれた。
アムネスティは以下のように政府に要求している。
タイ政府は、非暴力の中高生らに対する刑事訴訟手続きを停止し、恫喝や監視をやめるべきだ。また、子どもの抗議する権利の制限につながる法律を廃止または改正し、国際人権法と国際人権基準に沿ったものにすることが不可欠だ。
多くの若いデモ参加者は、進学や就職など人生の節目にある。タイ政府は、中高生らの拘束を解き、若者による権利の行使を認めるべきだ。
(アムネスティ国際ニュース)
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