2023年03月21日07時52分掲載
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コラム
58歳で大学院に進学 「いい年をして無理しないで」と言われつつ
私は58歳といういい年の初老の人間ですが、この春、大学院に進学する予定です。経済が右肩上がりの時代の昔だったら、退職後に悠々自適で教養を深めるゆとりたっぷりなイメージだったと思いますが、私の場合は未来の年金手取り額が月額4万円程度なので、とても普通の年よりの穏やかな未来とはなり得ないのです。ですから、教養を深める、ということも一般的には大切でしょうが、私の場合は学んだことを即仕事に活かしていく、ということが期待されるのです。
こうして昨年の夏ごろから試験や金策などの準備に入りましたが、まずこうした行動に出ると、「それは素晴らしいですね」と言ってくださる方がいる反面、「もういい年して無理しないで」的なことを言ってくださる方もいました。大学院で学ぶことを想像しているうちに心だけはいたずらに若返り、終了後はさらに留学をしよう、とかその後は企業に就職しようとか、20歳の学生も滅多にしないような妄想さえ膨らんでくるではありませんか。
アメリカの喜劇映画にハワード・ホークス監督の『モンキー・ビジネス』という映画があります。若返りの薬を研究していた製薬会社の研究員とその妻が、ちょっとした研究室でのハプニング(チンパンジーが若返りの試薬を飲み水に混ぜてしまう)でそれを飲んでしまい、いろんな珍騒動が巻き起こる楽しい映画です。年老いているのに若返っていく人間ほどはた迷惑な存在はない、という視点で描かれていまして、説得力もそれなりにあります。この映画では、ケーリー・グラントが主人公の研究員を演じていましたが、急に自動車で乱暴な運転をしてみたり、若い秘書に声をかけたりと「変化」が生じます。しかし、薬は何時間か経つと効果が切れてしまい、するとすぐに老眼に戻ったり、息切れして肉体が疲れやすくなったりするのです。
勉強をする、というのはある意味で、若返りであるという風に感じます。新しいことを学び、自分を少し作り替えていくことだからです。私の研究課題はフランス現代史なので、そっちの方面の研究が主になりますが、試験勉強を昨年した時、約40年ぶりに高校生向けの世界史と日本史の分厚い参考書を何冊か読み、年号の暗記用参考書なども買って読みました。昔一度確かに学んだこととはいえ、デテールはほとんど忘れていました。しかし、試験で一番心配だったことは、年号でも英語でもなく、作文で漢字を鉛筆で間違いなく書けるか、ということでした。長年ワープロで書いているうちに漢字が正確に書けなくなってしまっていますので、漢字が書けなくて試験に落ちる、ということが一番心配でした。そこで、毎日漢和辞典を読んでいましたし、小学生みたいに大きく白紙に漢字を正確な書き順で書きとっていました。こんな風に、自分を再点検する意味では良い機会になりましたが、周りの方々のご注意のように、肉体も老いているのですから、心にゆとりを持ち、無理をしない学び方を身に着ける必要があると感じています。
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