2023年04月19日18時06分掲載
無料記事
http://www.nikkanberita.com/print.cgi?id=202304191806413
人権/反差別/司法
21世紀の植民地主義 〜外国人研修生の苦難は明日の日本人の運命〜 その3
21世紀の植民地主義は、自国を植民地とする新植民地主義ではないかという仮説の3回目です。自民党が憲法から、国民主権や基本的人権を削除したがる理由というのは、それが「植民地の人間(支配される日本人)に対して」だからというのが一番、わかりやすいと思います。基本的人権が憲法から奪われた場合、労働基準法もまた奪われるものです。まさに、自国を植民地にする理由がここにあるので、こう考えてみると、多くの事象に理解が及ぶのではないかと思います。支配者のグループと、被支配者のグループの間で、いずれは大きな壁ができるはずです。現在も着々と目に見えない「壁」は建設されています。
では、そう考えてみると、今、入管施設で自殺したり殺されたりしている外国人や、日本各地で悲惨な状況で働かせられている外国人研修生はどのような存在なのか、と言えば明日の日本人かもしれないのです。外国人研修生は、みんなが苛酷なわけではないかもしれませんが、本稿では過酷な状況に追いやられている人を指します。外国人労働者と言えば、日本人の多くの人はまだまだ自分にさして関係がないことと思っているかもしれません。しかし、その運命は未来の日本人であると思えば、もっと具体的に知る必要を感じるのではないでしょうか。
それはどういうことかと言えば、入管施設にいる外国人たちは人権を奪われた存在に他なりません。憲法改正後の私たちも、そのようなものではないでしょうか。病気になって苦しさを訴えても、対処してくれないこともあるのです。そのために亡くなった女性がいます。そのようなことが起きてしまったのは彼女の人権が奪われていたからに他なりません。そして、その時、誰も彼女を助けてくれる人がいなかったのです。
憲法が改正され、基本的人権が制限されると、そのようなことが様々に行われるでしょう。自国植民地化とは、日本の労働者を過酷な条件で働かされている外国人研修生と同じ立場にしてしまうものとも考えられます。そうなった場合、入管施設と同様の、今度は日本人を対象にした労働収容所が建設されるかもしれません。新しく政府が導入する労働システムに反する労働者は皆、その施設に移されるかもしれません。戦争が始まったら、緊急事態となって、労働基準法など維持されないでしょう。今は日本国憲法が健在ですが、改憲となればそもそも最初から人権を守る基盤がなくなる可能性が高いのです。今日は体調が悪いから休ませてほしい、と言えるのは今が最後かもしれないのです。
ここで歴史に目をやれば、その先駆けは1933年にドイツのミュンヘン近郊に作られたダッハウ強制収容所です。ヒトラーが独裁政権を確立してすぐにこの施設を建設したのは象徴的です。ナチスが最初にドイツ国内に建設したこの強制収容所は、「暴力の学校」と呼ばれていました。ここには政治犯から同性愛者、共産主義者などナチスに従わない、あるいはその価値観に反するあらゆる人間が収容され、殺されていました。この施設で親衛隊は暴力で人間を支配する技術を学んだのです。その意味で、暴力を学ぶ施設〜いわば暴力専門学校だったのです。そして、ダッハウ強制収容所はナチスが征服したポーランドなど欧州各地に建設したすべての強制収容所のモデルとして機能しました。収容された人々に徹底的に無力感を感じさせ、辱め、誇りを奪い、骨の髄まで支配する、そんな思想で創られたのがダッハウ強制収容所です。ですから、近年、外国人収容者が殺されたり、自殺したりしている入管施設から「暴力」を奪い、収容されている人々の人権を守ることは、日本人の未来を守ることとほとんど同義でしょう。
ただし、ナチスドイツとの違いは、21世紀の資本主義の場合は、ナチスの民族主義と異なり、資本主義がより高度化された結果、史的システムとしての資本主義が、利潤拡大には他国民とか自国民といった区別を必要としなくなったことにあります。日本人の国際的な順位が下落しても、政府が真剣に対策を講じない理由はここにあります。その意味で同国民に対する植民地化も可能になります。したがって、その本質を隠蔽するためにマスメディアを統制して、「国民の物語」をベルリン五輪以上に、大々的に演出する必要があります。それについて、東京五輪の公式ドキュメンタリーの中で、ある男性が金をもらって東京五輪の反対デモに動員されたという発言が実は捏造だったことが発覚しましたが*、こんなことをしたのは「国民の物語」にたてつく人間を排除する意図があったのではないかと想像できます。国民の生活が困窮化していても、国民に政府に対してノーと言わせないためにはポリフォニーではない「国民の物語」が必要なのでしょう。
*NHK、事実確認せず不適切字幕「金もらって」「五輪反対デモ参加」
https://www.asahi.com/articles/ASQ196WCCQ19PTFC004.html
■ヒトラーが作った政治犯の強制収容所ダッハウ 〜ナチスの暴力の学校〜 対抗勢力は一網打尽
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201312122243414
■焚書の光景 〜ナチはまず大学から真実を奪った〜
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201307191146165
■バーニー・サンダースら上院議員12人がTPP再交渉をオバマ大統領に促す<<再交渉で致命的欠陥を是正するまで議会で批准の議論をすべきではない>> 上院議員たちが危機感を感じる複数の欠陥条項とは?
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201611020218563
■21世紀の植民地主義 〜朝鮮植民地化と同じことを日本国民に〜 その6
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=202304252304462
■21世紀の植民地主義 〜日本国民の上に君臨する「高天原族」〜 その5
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=202304232146180
■21世紀の植民地主義 〜自国植民地支配のために天皇制も危機にさらす〜 その4
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=202304201628204
■21世紀の植民地主義 〜外国人研修生の苦難は明日の日本人の運命〜 その3
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=202304191806413
■21世紀の植民地主義 〜自国を植民地にして今後はもっと苛酷に収奪する〜 その2
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=202304171658441
■21世紀の植民地主義 〜自国を植民地にして敗者から収奪する〜その1
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=202304160339170
Copyright (C) Berita unless otherwise noted.
日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。