2023年04月27日20時02分掲載  無料記事
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アジア

ミャンマー反政府デモ取材で射殺された長井健司氏のカメラが遺族に返還

 2007年9月の僧侶を中心とした民主化要求デモ(サフラン革命)の取材中に治安部隊により射殺されたジャーナリスト長井健司氏(当時50歳)が最期まで手にしていたビデオカメラが26日、16年ぶりに遺族に返還された。 
 ミャンマージャポンによると、カメラの返還式典は、タイの首都バンコクの外国人記者クラブで行われ、ミャンマーの独立メディア「ビルマ民主の声」(DVB)のエーチャンナイン編集長から長井氏の妹の小川典子さんに手渡された。 
 小川さんは「兄が死亡して16年が経過したが、まさかカメラが戻って来るとは思わなかった。これまでずっと返還を求めて活動してきたが全く情報がなかった。どのような経緯であれ返還されたことを嬉しく思うとともに、尽力してくださったDVBのエーチャンナインさんに感謝する」とコメントした。 
 カメラに残されていたテープには、長井さんが民主化運動を取材する姿や銃撃される直前の映像が記録されていた。 
 DVBは、カメラの入手経緯については安全上の理由から明かさなかった。 
 長井氏の射殺はヤンゴン中心部で何万もの市民がみている前で白昼に起きた。その射殺の瞬間を望遠レンズでとらえたロイター通信アドリーフ・ラティーフの写真は翌08年度のピューリッツア賞を獲得した。この殺害事件は国際的に大反響をよんだ。 
 では日本政府はこの自国民殺害にどのように対応してきたのだろうか。 
 事件現場にいたフリージャーナリストの宇崎真氏によると、日本政府は事件から三日たって外交チームと遺族代表をヤンゴンに送り遺体を引き取ったものの、肝心の事件究明、責任の明確化などの追及はしていなかった。遺品の返還を当局に求め「抗議」「遺憾」を表明しても形式的なものに終わっている。重要証拠でもあるカメラ、収録映像(SDカード)は返還されず遺品の一部(部分的に引きちぎられた手帳など)が戻ってきただけだ。それ以降の日本政府の動きをみれば、国軍の機嫌を損なわないように、あたかもケースクローズ、なかったことにしようとする態度が見え見えだったという。 
 その長井氏の遺品が、今になって国軍に対抗するメディアをつうじて遺族に返還されたのは謎である。 


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