2023年05月27日08時29分掲載
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環境
老朽原発 60年超稼働の可能性も!
GX (グリーントラストフォーメーション)脱酸素電源法案に関する参考人質疑が、5月25日、参議院経済産業委員会で行われた。同法案は、原子力基本法、原子炉等規制法、電気事業法、再処理法、再エネ特措法の5つの法律をまとめて改正する束ね法案で、衆議院本会議では、自民、公明、日本維新の会、国民民主などの賛成多数で可決された。現在、参議院での審議が進められている最中である。
同法案では、原子力規制委員会が所管する原子炉等規制法の、「原発の運転期間は原則40年とし、原子力規制委員会の審査に合格した場合、一回に限り20年延長できる」という運転期間に関する取り決めを削除し、法律の所管を、経済産業省に移す方針が示されている。原子力を規制する立場の原子力規制委員会から、原子力を推進する立場の経済産業省に運用期間に関する権限を移せば、原発政策が推進されることは必然的である。また、原子力事業者が予見し難い事由による運転停止期間を、運転年数から除外できるようにもなることから、実質的には60年を超える原発の運転が可能となるなど、今後は長期に稼働する原発がこれまで以上に増えていくことが予想される。
政府は原発の稼働を推進すべく法整備を進めているが、安全上の観点からこれに反発する声も多く上がっている。25日には、「国際環境NGOFoE Japan」や「原子力規制を監視する市民の会」などの市民団体が、参議院会館前で同法案の廃案を訴える集会を行った。
同集会には、経済産業委員会に所属している日本共産党の岩渕友参議院議員が駆けつけた。岩渕議員は、「今回の法案には古くなった原発を稼働させ続けるという内容が盛り込まれているが、5本もの重要法案をまとめて審議しており、委員の中からも『十分な審議が行えているとは思えない』という批判が出ている」と、中身のある議論がされていない状況を問題視した。
また、集会を主催した「国際環境NGO FoE Japan」の満田夏花事務局長は、「今でも原発事故で苦しんでいる人はたくさんいる。法案に反対する市民の声を国会議員に届けることが大切だ」と訴えた。さらに「原子力規制を監視する市民の会」の阪上武代表は、「原子炉圧力容器内にはその劣化を確認するために、数個の試験片が入っている。それを取り出して劣化の程度を計ることになるが、すでに試験片が全て取り出されてしまった原発は、劣化の程度を計る手段が確立されていない」と、原発の管理体制上の問題点も指摘した。
東日本大震災による原発事故が発生してから12年、政府は今国会で同法案を成立させて原発推進に舵を切ろうとしている。原発が年々劣化することは間違いなく、それが原因で東日本大震災と同様の惨事が起きる危険性もある。人知が及ばない原発の延命が将来世代にどう降りかかるかが懸念される。
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