2023年06月12日16時45分掲載
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核・原子力
ALPS処理水放出 懸念される海洋汚染
今年1月、政府は東京電力(東電)の福島第一原子力発電所で発生する処理水の処分に関する関係閣僚会議を開き、今夏から福島第一原子力発電所に貯蔵されているALPS処理水を海に放出する方針を固めた。
ALPS処理水とは、放射性物質が含まれる汚染水を、国の基準以下まで浄化処理した水のことであるが、この処理ではトリチウムを取り除くことはできない。処理水の海洋放出は国際的な環境汚染問題と捉えられることから、国内外の環境団体や漁業関係者が反発している。
2011年3月11日に発生した東日本大震災以降、東電は福島第一原発の廃炉作業を進めている。今夏に放出を計画しているALPS処理水とは、その過程で生じたものである。現在、発電所敷地内に保管されているALPS処理水は貯水タンク1000基以上で、その総容量は137万トンにも及ぶ。137万トンと言っても想像がつきづらいであろうが、リットルに換算(約13億7000万リットル)し、身近な容量に置き換えると一般家庭の浴槽(200リットル)約685万杯分にあたる。政府と東電は、このALPS処理水を今後30年かけて海に放出しようとしている。
浄化処理されたと言っても、国が定めた安全基準を満たしただけであり、元の水質に戻ったわけではない。ALPS処理水は、自然界に放出しても本当に問題はないのか。世界海洋デー(World Oceans Day)とされる6月8日、都内で環境問題を題材にしたシンポジウムが開催された。
同シンポジウムで講演した原子力資料情報室の伴英幸共同代表は、「放出される放射能は30種類にもなり、処理水の放出が海洋環境の汚染に繋がることは間違いない」と語った。重ねて、海洋放出される処理水には、浄化処理されないトリチウムだけでなく、有害度の高いウランとプルトニウムが含まれることから、「ALPS処理水を海洋放出するのではなく、セメントで固めるべき」と提案した。
経済産業省は、「安全基準を満たすまで浄化処理したため、海に放出しても環境や人体への影響はない」としているが、未だ解明されていない事項も多い原発事故で発生した処理水に関して、人間が作った安全基準を安易に当てはめていいのだろうか。ALPS処理水の放出は、日本だけでなく海で繋がる近隣諸国の海洋環境にも影響を与えるもので、場当たり的な対応は国際的な批判を招きかねない。環境汚染やそれに伴う健康被害は将来世代をも脅かす問題であることから、日本政府には先々を見据えた政策の立案を望みたい。
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