2023年06月15日21時55分掲載
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『AI監獄ウイグル』を読む ”AI監獄ニッポン”が透けて見えます
『AI監獄ウイグル』ーこの怖いタイトルの本を手にとりながら、一瞬懐かしい気分に引き戻されました。コロナ大流行直前の2019年秋、この本の舞台である新疆ウイグル自治区の首都ウルムチにいました。ガイド兼通訳をお願いした男性が「ここは世界で一番安全な都市です」と話し始めました。(大野和興)
「頭の上には数えきれないくらいたくさんのカメラが見守ってくれていて、百メートルおきに交番があります。何かあったら3分でお巡りさんが駆けつけてくれます」
頑丈そうな鉄条網で囲われ、まるでハリネズミのように見える小さな建物が目の前にあります。ああこれか、とカメラを向けると、ガイドさんはあわてて「写真は撮らないで、3分であなたは警官に周りを囲まれ保護されます」。
アメリカの著名な調査報道記者ジェフリー・ケインが長年取材し、この本を書いた以降もAI技術、人工頭脳は驚異的な進歩を遂げています。状況はさらに深刻になっているのでしょうが、本書の記述でさえ、そのおぞましさにぞっとします。
顔認証や指紋認証、買い物や行動履歴、すべて把握されていて、AIが罪を犯しそうだと予測すれば拘束出来る「予測的取り締まり」。健康診断結果、病気治療記録、血液、DNAもすべて採取され、国家ID、日本でいえばマイナカードに紐つけされ、予測的拘束に利用されます。
だけどこの国でも、いつどこの道を歩いていたかといった人々の行動はすべて当局にお見通しであることは、犯罪捜査で実証済みです。個々人の健康情報もマイナカードと一体化される健康保険証で一元管理に入ります。私たちは既に「AI監獄ニッポン」に生きていることを本書は教えてくれます。
(ジェフリー・ケイン著 濱野大道訳 新潮社 2200円+税)
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