2023年07月11日18時51分掲載  無料記事
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核・原子力

汚染水の海洋放出反対 韓国議員団とともに首相官邸前抗議

 日本政府は今夏にも福島第一原発の廃炉作業で発生したALPS処理水の海洋放出を強行する姿勢でいる。このALPS処理水は、トリチウムやウランなどを含む30種類もの放射能が含まれていることから“汚染水”だと指摘されており、その海洋放出については国内外で批判の声が上がっている。 
 
 そうした中、日本の市民団体と韓国の国会議員団が連携し、7月10日、汚染水の海洋放出に反対する抗議活動が首相官邸前で行われた。主催したのは「さようなら原発1000万人アクション実行委員会」や「認定NPO・原子力資料情報室」などの脱原発を訴える市民団体。韓国からは最大野党「共に民主党」の国会議員や漁業関係者が参加した。この他、汚染水の海洋放出に反対するために福島県民を中心に設立された「これ以上海を汚すな!市民会議」のメンバーも福島県から駆けつけた。 
 
 同抗議活動で来日した韓国国会議員は、「韓国では85%もの国民が汚染水の海洋放出に反対している。汚染水の海洋放出は日本だけではなく世界的な問題である。海洋放出以外の方法を模索するべき」と主張し、韓国の漁業関係者は「環境には国境がなく、汚染水の海洋放出は世界各国にとって取り返しのつかない事態を招く」などと訴えた。 
 
 日本からは、「原水爆禁止日本国民会議」の藤本泰成共同代表、「認定NPO・原子力資料情報室」の伴英幸共同代表らがスピーチし、藤本共同代表は、「汚染水からトリチウムを取り除く技術があるにも関わらず、莫大な費用がかかることを理由に政府や東電はそうした技術を活用しようとしない。最もコストが低く安易な方法で汚染水を処理するために海洋放出が選択された」としてその過程を批判した。 
 
 また、伴共同代表は、「国際原子力機関(IAEA)の報告書(※)では日本政府が海洋放出を選択したプロセスについては評価されていなく、海洋放出以外に考慮されるべき手段が全く検討されていないことに問題がある」としつつ、「IAEAの報告書には『海洋放出のデメリットよりもメリットが上回ることが大原則である』旨が記載されているが、汚染水の海洋放出がメリットになり得る者はいなく、環境汚染にも繋がり風評被害などでデメリットを被る者の方が多い」と指摘した。 
 
 原子力規制委員会は7日、東電に対して処理水の放出設備が使用前検査に合格したことを示す修了証を交付した。政府と東電は、今夏の放出に向けて着々と計画を進めているが、反対意見をないがしろにしたまま海洋放出を強行することがあってはならない。代替案として、処理水を大型貯蔵タンクに保管する案やセメントで固めるモルタル個化案なども出ている。政府は海洋放出ありきの廃炉作業を行うのではなく、政府方針と異なる意見であっても国内外の声を幅広く聞き入れる必要があるのではなかろうか。 
 
(※)日本政府が計画する処理水の海洋放出について“国際的な基準に合致する”と結論づけたIAEAの報告書。 


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