2023年07月15日12時31分掲載  無料記事
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国際

「黒海穀物取引は頓挫か?」【西サハラ最新情報】  平田伊都子

「ゼレンスキー閣下はアメリカとNATOと国連に騙された」と、評判です。 「プーチン大統領は国連黒海穀物取引に騙されるか?」と、7月17日で賞味期限切れになる国連黒海穀物取引を巡って、国連報道室はざわついています。 
 NATOもウクライナ大攻勢も国連も、本当はどうなっているのか?私たち庶民には何も伝わってきません。 
 
①ウクライナ戦争反対のマックス・ブルメンタールが国連安保理で米国の真実を証言: 
 グレイソーン(アメリカの著名なブログ)のマックス・ブルメンタールが国連安保理でロシアとの紛争激化における米国のウクライナ軍事援助の役割と、キエフ(外国でのキーウ呼称)の代理戦争に対する米国政府の支援の背後にある本当の動機について証言した。 
 「私は、複数の大陸の政治や紛争を取材してきた20年以上の経験を持つジャーナリストとしてだけでなく、自国政府に駆り出されて、地域と国際の安定を犠牲にして代理戦争に資金を出さされているアメリカ人として、ここにいる」と、話し始めた。 
 「米国政府はまだウクライナへの資金提供に関する正式な監査を行っていない。アメリカ国民は自分たちの税金がどこに消えたのか全く分からない。グレイゾーンは今週、 2022年から2023年度にかけてのウクライナへの米国の税金配分に関する独立した調査結果を発表した。米国社会保障局からキエフ政府への448万ドルの支払いが判明した。ウクライナ国債の返済のために米国国際開発庁から45億ドル相当の支払いがあったことも判明したが、その大半は世界的な投資会社ブラックロックが保有している。アメリカ人の10人中4人が400ドルの緊急事態に備える余裕がないというのに、アメリカ国民1人当たり30ドルを税金徴収されることになる。私たちは、ウクライナのために割り当てられた税金がトロントのテレビ局、ポーランドの親NATOシンクタンク、そして信じられないかもしれないがケニアの農村農家(オバマのおばあちゃんが住む)の予算を水増ししていることを発見した、、CBSニュースは、ウクライナの親ゼレンスキー非営利団体の理事の発言を引用し、援助の約30%しかウクライナの前線に届いていないと報告した。 
 今年5月、ウクライナ政府から供給された武器で装備した反クレムリンのロシア・ネオナチのグループ<ロシア義勇軍>が、アメリカ製のハンビーを使用してロシア領土内でテロ攻撃を実行したとして西側政治家から称賛された。 
 一方、民主化で括られるウクライナ戦争では、ウクライナへの軍事援助に反対する者は民主主義の擁護に反対することになる。では、野党を禁止し、正当な政敵の報道機関を犯罪化し、トップの政敵を投獄し、トップの議員を一斉検挙し、ロシア正教会を襲撃し、聖職者を逮捕するというゼレンスキー閣下勅令のどこに民主主義があるのだろうか?」と展開していった。 
 「ゼレンスキー閣下と米国議会議員の両者が国連憲章第51条の精神に反するロシアへの先制攻撃を求めているとき、理事会はその憲章を執行するための行動をとらなければならない。同憲章第 6 章の第 33 条から第 38 条は、安全保障理事会が紛争の平和的解決を保証するためにその権限を行使しなければならないことを明確にしている」と、くくった。 
 
②「反転攻勢は破綻」ラリー・ジョンソン、2023年7月発表: 
 「ウクライナを待つのは砲弾の不足と膨大な人員、軍事装備の損失による敗北だ」と、CIA(米中央情報局)の元アナリストで軍事専門家のラリー・ジョンソンが、米著名コラムニスト、アンドリュー・ナポリターノ氏のポッドキャスト番組「Judging Freedom」に出演したなかで明言した。その理由を、「米国は、ウクライナの戦闘能力を維持するために必要な数の砲弾を生産する製造能力を失っており、ウクライナが1ヶ月に使うのと同じ数の砲弾を製造できるようになるのは1年後だ」と、語った。さらにラリーは、ウクライナの反転攻勢は、<破綻>と断言した。その理由は、「ウクライナにとって壊滅的な大量の装備が破壊され、人的損失も大きかったからだ」と、している。さらに、前線では目立った戦果も出せず、ロシアの第一防衛線さえ突破できていない」と、指摘した。 
 バイデン米大統領は、西側諸国がウクライナに供与した軍備の備蓄が枯渇しつつある事実に言及した。米国の武器庫も枯渇してきており、だから、禁じ手であるクラスター爆弾の供与に踏み切ったという。しかし、第二の核兵器と非難される<クラスター爆弾>を、在庫整理で使用するアメリカの独断は、<原爆を落としたのは終戦を早めるため>というあの恐ろしい<ミーファースト弁明>に繋がる。<米のクラスター爆弾供与>に関して国連事務総長は、型通りの遺憾表明を出したが、アメリカに制裁を科す行動は取らない。アメリカは何をやってもお咎めがないとは、不公平だ。 
 NATO(北大西洋条約機構)のイェンス・ストルテンベルグ事務総長も11日の首脳サミットを前に、「製造能力の完全稼働までは時間がかかる」と述べている。ストルテンベルグ事務総長は、ウクライナの要求は「膨大」であり、現在は「消耗戦」になっているとの見解を示した。 
 「NATO加盟への道はウクライナに対して開かれているという決議が採択された。ただし、ウクライナがロシアに勝った場合にのみ起こり得る。事実上、欧米はウクライナに対してウクライナ人が最後の1人になるまで戦うよう促しているのだ」と、ユーリ・クヌトフ・ロシア軍事専門家は分析した。 
 「我々米国は最後のウクライナ人までこの戦争を戦わなければならない」と、キエフでゼレンスキー閣下にお目もじしたグラハム米上院議員も、語っている。 
 騙されているのは?ウクライナの庶民かもしれない?? 
 
③プーチン・ロシア大統領に手紙を送った国連事務総長: 
 2023年7月12日、国連定例記者会見でステファン国連事務総長報道官が、7月17日で期限切れとなる<国連黒海イニシャチブ>に言及した。報道官は、「この点に関する彼の継続的な努力の一環として、事務総長は7月11日に、ロシア連邦大統領のウラジーミル・プーチンに手紙を送り、覚書の重要なさらなる実施と黒海イニシアチブの運用を維持するための重要な必要性を調和させることを目的とした提案を概説した」と、声明を出した。 
 報道官は、「この協定は、ロシア連邦が表明した主要な懸念であるロシア農業銀行を通じた金融取引に影響を与えるハードルを取り除くと同時に、黒海を通るウクライナの穀物の継続的な流れを可能にするためにある。事務総長は、ロシア連邦とウクライナの両方からの食料と肥料の輸出が世界の食料安全保障にとって決定的に重要であると強調している」と、説明した。が、実際に流れているのはウクライナ産だけで、ロシア産は流れてない。 
 「事務総長の懸念は、イスタンブールの取り決めの崩壊とそれに続く世界的な食料と肥料の価格の上昇から最も多くを失う立場にある世界中の脆弱な人々だ」と、報道官は貧しい者に味方する国連事務総長を印象づけた。暗に、黒海取引が潰れたら、非人道的なロシアの所為だと、責任をロシアに押し付け、なおかつ、ロシアの評判を落とそうとしている。 
 しかし、大方の番記者は、2022年7月にイスタンブールで締結された<国連黒海穀物取引>が<国連黒海イニシャチブ>と変名され、ウクライナ産穀物のロシア領海通過のためだけの<ロシア騙し取り決め>だということを、しっかり認識している。 
 「ロシアからの反応はあったか?」との番記者の質問に、「我々は、手紙が渡ったことを認識している。当局が見たことも、知っている、、返事はない」と、報道官は応えた。 
 「交渉に当たってきた国連事務総長代理の一人は、モスクワに行ったのか?もう一人はトルコに行ったのか」との質問に、「まだだ、動きがあったら報せる」と、報道官が答えた。 
国連も国連事務総長も、その言葉とは裏腹に、何も努力していないのが明白になった。 
 
 「憲章はロシアとウクライナだけではない。この国連安保理には米国とNATOとして知られる違法な軍事組織を厳しく監視し抑制する義務がある」と、マックスは訴えました。 
 国連事務総長は、率先して、ウクライナ戦争停戦に向け必死に行動すべきです。 
 停戦すれば、黒海穀物取引も停止し、膨大な軍事費も停止し、本当に貧しい人々を助けることができます。 
 
 
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 「サラー西サハラ難民アスリート」の出版情報です。 
著者:平田伊都子、写真構成:川名生十、画像提供:アマイダン・サラー、SPS、 
定価:本体1,800円+税、 
発行人:松田健二、 
発行所:株式会社 社会評論社、東京都文京区本郷2―3―10、電話:03-3814-3861 
同じ「社会評論社」が出版してくださった「ラストコロニー西サハラ(2015年)」、「アリ 西サハラの難民と被占領民(2020年2月)」にも、お目を通してください。 
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Youtube2018年7月アップの「人民投票」(Referendum)もご案内。 
「人民投票」日本語版 URL :https://youtu.be/Skx5CP3lMLc 
「Referendum」英語版 URL: https://youtu.be/v0awSc25BUU 
Youtubeに2018年4月アップした「ラストコロニー西サハラ」もよろしくお願いします。 
「ラストコロニー西サハラ 日本語版URL:https://youtu.be/yeZvmTh0kGo 
「Last Colony in Africa]  英語版URL:  https://youtu.be/au5p6mxvheo 
 
WSJPO 西サハラ政府・日本代表事務所 所長:川名生十  2023年7月15日 
SJJA(サハラ・ジャパン・ジャーナリスト・アソシエーション)代表:平田伊都子 


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