2023年08月17日08時17分掲載  無料記事
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コラム

危機に柔軟に対応できなければ滅びるしかない 〜偽りの危機を煽る与党と真の危機を報じないマスメディア〜

  威勢のよいスローガンをぽんぽん放っていた安倍政権のアベノミクスの行きついた最果ての地が今の日本であると、ようやく多くの人々が感じつつあります。そうなることを理解していた人は2013年の夏には一定数存在したと私は見ています。つまり、それから10年にわたって、ほぼ一貫して、マスメディアは国民に真実を伝えてこなかった、あるいは、両論併記=どっちもどっちという論調で、真実が何か誰にもわからないような記事で、読者の思考を不可能にする記事を量産してきたと言えると思います。(みんなが気がつくまで、その間に儲けるだけ儲けたのです) 
 
  給料が伸びない中での円安と資源高がけん引する物価高、非正規雇用の増大、国内製造業の低迷、消費の低迷、格差の一層の拡大。これは経済政策の失敗である、と率直にマスメディアは報じることができなかったのです。その結果として、読者・視聴者である国民は何が正しいか理解できず、どっちもどっちとばかりに選挙の投票に行かず、政治離れを引き起こしてしまいました。これは大半がマスメディアが真実を伝える義務を放棄し、与党に一貫して味方してきた罪であると思います。私もその始まりの頃はマスメディアの一端で働いていたので、よくわかります。その結果として可処分所得が減った人々はますます新聞を買わなくなっていき、それがさらなる政治離れを引き起こしています。 
 
  これは非常に不健全な状態だと思います。台湾に行くと、政府寄りの新聞もあれば、野党よりの論調の新聞もあります。双方、書くところははっきりと書きます。どっちもどっち、みたいな両論併記で読者を宙ぶらりんにして済ませたりは決してしません。記者の考えが明確に述べられています。だからこそ読者も視点が明瞭になります。その新聞の論調に賛成できなかったら、別の新聞を読むのです。大切なことは記者が最後まで読者に寄り添い、決して「じゃ、さよなら」とがけっぷちから突き放したりしないことです。 
 
  台湾の人びとは、戦後だけとっても日本とは比較にならない苦労を強いられてきました。現在も大陸の中国政府との関係で苦労しています。しかし、台湾の人びとは2014年春のひまわり運動の時のように、政治の危機に対して明快な意思を示し、腰が軽く行動できます。危険に対する対処が素直です。1つの国家、1つの国民が生き延びていくことを考えた時、危機に素直に対処できる能力は重要だと私は思います。韓国もその意味では素直に危機に対処できます。それに対して、日本人は何かと言い訳を考え、自分が行動しない口実ばかり考え、物事を複雑にして、誰も責任を取ろうとせず、いつまでも行動に移しません。このことが自民党の経済政策が失敗していながら、庶民が政権交代を起こせない源だと私は思います。さらに、自民党は偽りの危機を煽り立てて、真の危機から国民の目をそらしてきました。日本国民は、そうした政府の嘘に騙されるままになっています。むしろ、日本政府こそが日本人の安全と繁栄に対して最も危険な存在になっていると私は思います。しかし、日本人は危機に対する感性が極めて鈍くなっていると世界各地で取材を重ねてきた私には思えるのです。偽物の政治家に対する感性も、戦争で辛酸をなめた昭和の戦後の時代に比べて、はるかに鈍くなりました。鈍化する感性では、滅びに向かっていくしかないでしょう。 


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