2023年08月18日19時57分掲載
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入管
入管法廃止を訴え続ける市民の声
2023年6月9日、入管法改正案が国会で成立。同法の施行まで1年を切る中、「外国人の命さえ奪いかねない」などと同法に対する批判の声はいまだ大きい。都内のターミナル駅の周辺等では、入管法成立から2ヶ月近くが経った今も、「入管法の改悪に反対します」、「難民いじめる政治家いらない」などと書かれたプラカードを掲げる市民がスタンディング行動を実施している。それほど、同法の“廃止”を求める声は今も根強く残っているのだ。
「入管法の成立は屈辱的だった」。そう話すのは、首都圏を中心に入管法廃止アクションに取り組む新妻基行さん(52)。
新妻さんが入管問題に関心を持ち始めたのは今から約4年前。そのきっかけについて、新妻さんは「2019年に大村入国管理センター(長崎県大村市)で当時収容中だった外国人男性が“餓死”するという痛ましい事件を機に入管問題に関心を持ち始めた」と話す。翌年、新妻さんは、東京・品川区で実施された抗議行動に参加。この日、人生初となるデモを経験した。新妻さんは当時の行動を「自分の中での“第一歩”だ」と振り返る。
その後、2021年に名古屋出入国在留管理局で当時収容中だったスリランカ人女性ウィシュマ・サンダマリさんが死亡したのを機に、新妻さんはこれまで以上にデモに駆けつけ、国会前での座り込み行動にも連日のように参加した。また、今年に入ると、新妻さんはより一層、抗議デモに注力するようになり、仲間が呼びかけたスタンディング行動に参加するだけでなく、千葉県流山市などで自らスタンディング行動を呼びかけることもあった。新妻さんは今年の行動を振り返り、「仕事を休んででも、寝る時間を削ってでも、デモやスタンディングに参加していた」と話す。
今年6月、入管法は政府与党によって強行採決されてしまったが、新妻さんは今でも駅前などで「入管法廃止」を訴え続けている。筆者は入管法廃止の声を上げ続ける理由について尋ねると、「入管法は、人の命や人権を軽視した内容であることに加え、参政権を持たず、政治家を選ぶ権利のない外国人たちが、一方的に不利益を被る法律だからだ」と新妻さんは話す。
入管法の成立は、母国で迫害の恐れのある在留外国人だけでなく、新妻さんの私生活にも影響を与えている。趣味で音楽活動をやっている新妻さんだが、「入管法によって苦しめられている人たちのことを思うと、趣味の音楽活動にも集中できなくなったし、曲をリリースすることも躊躇ってしまう自分がいる。まるで東日本大震災を経験した時と同じような気持ちになっている」と嘆く。
一方で、外国人の受け入れや管理を担う入管庁に対しては、「日本の少子化問題が改善されない限り、労働力不足の問題はこれからもっと顕著になってくる。もしそうなれば移民の力を借りるしかないだろう。“排外主義”を続ける入管庁の政策は今後、間違いなく行き詰まるだろうし、入管庁は移民の受け入れについて早急に検討する必要があるのではないか」と懸念を示した。
筆者が最後に「これからも入管法廃止の運動に取り組むのか」と問いかけると、新妻さんは「入管の問題が続く限り、私はアクションをやめるつもりはない。未来の自分に『やれることはやった』と言えるように、私はこれからもあらゆる場所で『入管法廃止』を訴え続けるつもりだ」と意気込んだ。
(聞き手:藤ヶ谷魁)
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