2023年08月26日20時30分掲載
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社会
成田空港周辺住民が騒音訴訟 深夜早朝の飛行差し止めと健康被害への賠償を
成田空港周辺の住民が深夜早朝の飛行差し止めと騒音被害の損害賠償を求めて、成田空港株式会社(以下空港会社)と国を訴えました。提訴に伴い、空港周辺住民で作る「成田空港の騒音から生活を守る周辺住民の会」は成田空港における現実の騒音が住民の健康にどのような障害を与え、どのような被害をもたらしているかを調査するため、その資金を募るクラウドファンディング立ちあげました。(大野和興)
提訴したのは千葉県芝山町、成田市、横芝光町、茨城県稲敷市と2県にまたがる住民138人です。原告は今年3月31日に空港会社を相手に飛行差し止めと損害賠償を求めると同時に、原告代表15人が国に「差し止め・義務づけ」の行政訴訟を起こしました。損害賠償請求額は2億9300万円です。
成田空港については長い間地元農民による反対運動があり、その運動の影響もあって夜10時代は10便だけ、夜11時から朝6時までの7時間は飛行禁止、という措置がとられていました。しかし2018年に国交省、千葉県、成田空港、空港周辺9市町で「4者協議会」を設置し、首都圏の航空需要に合わせるとして空港機能強化策を決定しました。この4者協議会に住民は入っておらず、意見を聞かれることもなく決定したものです。従来の滑走路をさらに伸ばしたり第三滑走路を新設し、発着回数を従来の年30万回から50万回にするなどの大拡張方針がこうして決まりました。
この機能強化策によって、飛行時間の制限が、2019年に12時から午前6時までに緩和され、さらに2030年には飛行機が飛ばない時間帯は午前1時から同5時までとすることが決定されました。1日24時間のうち、飛行機が飛ばない時間は深夜の4時間しかないことになります。
年間50万回を単純計算しますと、飛行禁止の深夜4時間をのぞき1時間にほぼ70回、飛行機が頭上を飛ぶ計算になります。旅客機ですから、すべて大型です。この結果、何が起こるか。
「食事、団らん、休息、勉強等の夜間早朝の生活を著しく妨害しているだけでなく、何よりも住民の睡眠妨害及び睡眠障害(それに伴う心身の各種疾病)を生じさせている」(訴訟弁護団共同代表・海渡雄一氏)。
このことを住民訴訟を担う「周辺住民の会」は具体的に立証するための調査・研究の資金をクラウドファンディングでお願いしたいとしています。目標金額は300万円。騒音測定、睡眠状態測定等による住民側のデータを蓄積し、専門家による分析をする費用です。詳しくは以下のサイトで見てください。
https://readyfor.jp/projects/naritajumin
成田市在住の原告の1人は、安心して子育てができないと若い世代が家を出てしまい、年寄りだけが残される家庭も出ていると話しています。原告の1人樋ヶ(ヒノケ)守男さんは騒音下の住民の声を以下のように伝えています。
(三里塚歴史考証室通信第2号「成田空港機能強化を考える2」、2022年7月12日)
「とにかく飛行機の音がうるさくて。窓ガラスも家もゆれるし、音が聞こえ始めると心臓がぱくぱくするtぴうks、鼓動も脈もたかくなって」
「音が切れることがないというか、通り過ぎたなと思ったら、10秒くらいでまた聞こえたりして」
住民の訴えが第一の目標としているのは、飛行禁止時間帯を夜9時から翌朝7時までとすること。これは大阪国際空港並の規制で、控え目な要求でさえあります。
資料
< クラウドファンディング資金使途 >
・睡眠時の脳波検査費(50%)
・騒音調査機材費(30%)
・学者意見書費用 (10%)
・研究所調査報告書費 (10%)
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