2023年09月12日10時12分掲載
無料記事
http://www.nikkanberita.com/print.cgi?id=202309121012062
経済
NYT報道 カリフォルニア州のファストフードレストラン業界が最低賃金の時給20ドル(2920円)で労組と妥結
2030年代半ばには時給の最低賃金を1500円にあげるのを「目標」に掲げて国民に大見えを切ったつもりの岸田首相だが、そんな遠い先の1500円に国民は信頼していない。そんな中米国のカリフォルニア州ではレストラン業界で最低賃金の時給20ドル(2920円)で労組と経営者たちが妥結したとニューヨークタイムズ*が報道した。ここで言うレストランとはファストフード業界だ。その開始期限も来年4月に決まった。10数年後になんとか・・・というのと雲泥の差であり、まさに象徴的な意味における日米戦争の第三の敗戦だろう。とはいえ、ニューヨークではホームレスが増えているという記事も最近、どこかの新聞で出ていたのを記憶する。
※Restaurants and Unions Agree to Raise Pay to $20 an Hour in California
https://www.nytimes.com/2023/09/11/business/california-restaurant-union-deal.html
ニューヨークタイムズによれば、賃上げは経営者を守ることにもなるとされ、その背景には昨年、カリフォルニア州議会でAssembly Bill 257(AB257)でレストラン業界の時給の最低賃金を22ドルまで引き上げてよいという州法が通ったことにあるとされる。民主党選出のカリフォルニア州知事ギャビン・ニューサムが州法に署名して成立した。地方選挙あるいは地方政治の重要性がわかる記事だ。
この記事ではファストフード業界と労組の労使交渉の結果、今回、州議会で詰めていた州法案AB1228が大幅に修正が妥結されたとされる。つまり、賃上げと引き換えに、ファストフードチェーンに対して、店内で起きた労働環境に関する責任条項を削除するというものだ。以下は、カリフォルニア州法のウェブサイトで、交渉妥結によって起きた修正が生々しく明示されている。
https://leginfo.legislature.ca.gov/faces/billTextClient.xhtml?bill_id=202320240AB1228
たとえば削除された法案の記述に以下のものがある。
「・・・This bill would require that a fast food restaurant franchisor share with its fast food restaurant franchisee all civil legal responsibility and civil liability for the franchisee’s violations of prescribed laws and orders or their implementing rules or regulations. ・・・」
(この州法案は、ファストフードレストランのフランチャイズ企業本社とフランチャイズ加盟店が、フランチャイズ店が法規制などを違反した場合にあらゆる法的責任を共同で負わせるものである・・・)
この条項が削除されることで、法的責任つまり罰則金を共同負担させられることがなくなり、経営陣にとっては収支の見通しの不透明さが減る、という意味で店の経営者にとっても旨味があるとされる。
このカリフォルニア州の事態を見れば、日本の失われた30年が何であったかが浮き彫りになるように思えてならない。労組が弱く、経営者よりで本質的にはほとんど闘争してこなかったのではないかということだ。もちろん、労組の加盟率も低迷している。労働者自身が〜ファストフード業界を含め〜政治家の政策を自分の頭で考えて選挙で投票してきたのか、ということも反省材料だろう。そして、この30年間に膨れ上がった内部留保と株主への還元の大きさに目を向ける時である。
Copyright (C) Berita unless otherwise noted.
日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。