2023年09月30日10時02分掲載
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【入管問題】名古屋入管死亡事件 入管幹部再び不起訴 国賠訴訟では国側が医師の意見書提出
2021年3月に名古屋出入国在留管理局でスリランカ人女性のウィシュマ・サンダマリさんが亡くなった問題について、名古屋地方検査庁が29日、遺族らが殺人などの容疑で起訴を求めていた当時の入管局長ら13人を「殺意や故意性がない」として不起訴にした。同日遺族らが会見を開き、ウィシュマさんの妹であるワヨミさんが「なぜ処罰されないのか理解できない」と語った。
同事件に関しては、9月27日に市民団体が名古屋地方検察庁に起訴を求める署名を提出したばかり。その際に提出された署名の累計は約22,000筆であった。署名提出時に「入管の民族差別・人権侵害と闘う全国市民連合」の本間鮎美さんは、「署名を受け取った職員には、遺族の意見と署名がこれだけ集まったということを、担当検事に伝えるよう確認した」と述べていた。
本件については、遺族らが国家賠償請求訴訟で民事でも係争中。9月27日には、第9回口頭弁論が開かれ、国側から医師の意見書が提出された。同意見書では、ウィシュマさんが収容時に「私、死ぬ」などと繰り返し発言したことについて、「看守の注目を集めるためのもの」という医師の見解が示された。これに遺族であるワヨミさんは「姉が苦しんでいる状況を大袈裟に見せているかのように(意見書が)書かれているが、本当にそうであれば姉は死なずに生きていたはずだ」と、強い口調で語った。
入管施設への被収容者は、身の回りに親族がいるわけではなく、自らの異常を周囲に伝える手段が限られる。口頭弁論後の報告会で児玉晃一弁護士が、「彼ら彼女らにとって、声を出して入管職員を呼ぶことが命綱」と語っているとおり、命を預かる入管職員は、被収容者の訴えに真摯に耳を傾ける必要があるといえるだろう。難民申請中の在留外国人の送還を強化する改定入管法の施行に反対する声も上がる中で、日本の入管行政の在り方が問われている。
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