2023年10月27日19時37分掲載
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コラム
【山里から�◆曄／綮卉和△呂發Δ劼箸弔僚�性史 西沢江美子
糸とり娘たちの悲しみ
私が住む秩父の水子は、ほとんどが糸とりや機織り女性の子どもだという。かつて秩父は養蚕と機織りを中心に、豊かなくらしと文化を花開かせていた。それはまた日本の近代を築き上げた。その繁栄の根っ子で支えた糸とり女たちの話を、秩父に住み、ずっと聞き取ってきた。
秩父の糸とり女は圧倒的に東北の農村から来ている。その数は多いときで二千人ほどだったと伝えられている。住み込みで、休める時間は昼食の時だけ。朝から晩まで糸をとった。職場を見張る男たちによって、女たちはしばしば性の対象にさせられた。妊娠させられ、それでも働き続けるために「水子地蔵」を作らねばならなかった。
これは秩父だけの話ではない。養蚕地帯の周辺の糸取り工場地域では、水子を守る苔むした五百羅漢が、こうした女たちの歴史をわずかに伝えてくれる。
そして今、就職を取り消されると産まれたばかりの子どもを捨てた女子大生。双子の死産児を一人で遺棄したベトナム人技能実習生は、強制帰国をおそれて妊娠を誰にも相談できなかった。ニュースになっただけでも上げればきりがない。ハンセン病だから、障がい者だから、と産む権利を奪われた人たち。糸取り女たちの悲しみは今も続いている。
水子地藏に手を合わせていた女性に出会った。「母の遺言で毎春おまいりにきます。戦後の産児制限でおろした弟を思って」「ごめんなさい。生きていたら七〇歳。宿った生命を心配しないで誰もが産める世の中であってほしい」と。
テレビや新聞で「少子化」の三文字が毎日飛び交っている。それは水子地蔵に込められた「感謝」と「祈り」に応えるものなのだろうか。その背後には国家の人口政策が見えてくる。さらに目を凝らすと軍拡という二文字が浮かび上がる。
（にしざわ・えみこ 農業ジャーナリスト）
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