2023年12月03日01時09分掲載
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欧州
一人の女の子の死から考える―「女性に対する暴力撤廃の国際デー」〜チャオ!イタリア通信(サトウノリコ)
11月25日は、「女性に対する暴力撤廃の国際デー」でした。イタリアでも毎年この活動が行われていますが、今年は特に多くの若い女性が集会に参加し、スーパーの前でも「国際デー」をアピールするチラシが配られるなど、今までにない活動が見られました。
というのも、ある一つの事件がイタリア全体で注目されていたからとも言えます。その事件は11月11日、ヴェネツィアのあるヴェネト州でジュリア・チェッケッティン(22歳)という女性が行方不明になったという事件でした。ジュリアが行方不明になる前に、彼女の家の近くの駐車場で元カレであるフィリッポ・テゥレッタ(22歳)と言い争いをしているのが目撃されていました。さらに、ジュリアがフィリッポに無理やり車に乗せられたのも目撃されています。その後、二人が行方知れずになってしまったことで、連日のようにニュース番組で報道されていました。
ジュリアが行方不明になって7日後、オーストリアに隣接するフリウリ・ヴェネツィア・ジュリア州にあるバルチス湖で、残念ながらジュリアは遺体で見つかります。その後、フィリッポの行方が分からず、それについても毎日ニュース番組で報道されていましたが、11月19日にドイツの都市ライプツィヒの近くでフィリッポは捕まりました。
このニュースは、ジュリアが可愛らしい22歳の女の子で、あと数日で大学で卒業論文を発表するということもあり、イタリア全土で彼女の死が悼まれるという広がりを見せました。私の住む町でも、管轄している中学校から11月21日にジュリアの死に哀悼の意を表するために1分間の黙とうをするよう通達が来ていました。
色々なテレビ番組でもこの事件は話題になり、駐車場で二人が言い争ってジュリアが連れ去られたという報告が警察にあった時に、警察がすぐに動いていればジュリアは助かったのではないかなどという疑問も投げかけられていました。
こうした元カレや元夫からの暴力により、殺害された女性の数は、2023年イタリアで100名(11月15日現在)となっています。私がイタリアに住むようになって、この「フェミニチディオ」(フェミナ=女性、オミチディオ=殺人を合わせた言葉)をよく聞きますし、「フェミニチディオ」の事件を紹介する番組もありました。ただ、状況が変わっているという印象は受けません。
マッタレッラ大統領やローマ教皇が、「国際デー」にこの事件に言及して、男女の平等や男女間のリスペクトを訴えても、簡単に状況を変えられるものでもないでしょう。小さなことですが、私の9歳の娘が最近サッカーを始めました。そのクラブでは同じ年の子たちのグループはほとんどが男の子です。娘が入ったことでその友達も入り、女の子は合計で4人になりました。男の子たちはそれに文句を言っているそうです。どうでしょう。サッカーは男の子だけのスポーツなのでしょうか。ほんとに小さなことですが、私たちの中でもこれをするのは男、あれをするのは女というような感覚が染みついてはいないでしょうか。それは理屈ではなく、DNAに染み込んでいるある種道理だけではぬぐえないようなもののような気がします。
もし、本当に男女間の平等を実現させようと思えば、こういった自分の感覚に染みついたものを一人一人が見直し、深く考えていかなくてはいけないと思います。それは、並大抵の作業ではない本当の覚悟が必要です。私に今できることは、子どもたちに人間は自由であること、男女に関係なくお互いをリスペクトするということを教え、自分自身も実行していくことではないかと考えます。
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