2024年01月09日22時56分掲載  無料記事
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核・原子力

【たんぽぽ舎発】2024年能登半島地震による原発への影響は…  再び「原発震災」を起こさないために 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)

◎能登半島地震の概要 
 
 気象庁のデータによると「令和6年能登半島地震」は、日本時間2024年1月1日16時10分、北緯37.5度、東経137.2度、震源の深さは10〜16kmキロで浅く、マグニチュード7.6と、記録上は石川県で最大の規模になった。 
 最大震度を記録した地震の前後には、震度5を超える地震が発生していた。その後も地震が数多く続いている。地震と共に津波も発生しており、最大波高は輪島港で1.2mと記録された。しかし輪島港の1.2mは正確ではない。地震と同時に数秒で隆起が発生し、4mの高さになっている。このため験潮計(津波観測計)の機 
能が停止した。 
 
 東大地震研による現地調査では、志賀町でも4mを超える津波の到達が確認されている。津波は北海道から長崎県対馬まで日本海全域で確認されている。 
 
◎志賀原発の現状 
 
 この地震は、石川県志賀町にある北陸電力志賀原発に影響を与えた。 
 1月2日、地震調査委員会の平田直委員長は「今回の地震の震源となった断層はあらかじめ知られていた断層ではない」と説明した。 
 志賀原発の耐震評価でも、これら断層の活動を考慮していない。 
 震源からは70キロほど離れている志賀原発では、震度5から6弱程度 
の揺れに遭遇した。北陸電力によると「1号機原子炉建屋地下2階震度5強、三成分合成399.3ガル、水平方向336.4ガル、上下方向329.9ガル」としている。 
 
 志賀原発の現在の基準地震動は1000ガルであるが、福島第一原発事故の際の基準地震動は水平600ガル、上下405ガル。今回の地震ではそれを下回っていた。 
 現在、志賀原発は1、2号機共に運転停止中である。再稼働する見通しはなく、危険なのは使用済燃料を貯蔵しているプールだけだ。プール水の冷却は継続されており、冷却用のポンプも稼働している。 
 
◎志賀原発への影響 
 
 地震による影響について、政府は「異常なし」としているが、ウソである。 
 原発にとって安全上重大な問題がいくつも起きており、稼働していなかったことと、最大の揺れを引き起こした断層から離れていたことが幸いしたに過ぎない。 
 
 志賀原発には外部電源が3系統5回線あり、そのうちの50万ボルト1系統2回線は停止した。 
 外部電源の一部は遮断され復旧の見通しは立っていない。原因は絶縁油の配管損傷による変圧器の油漏れだった。 
 1号機側の起動変圧器では、油漏れに加えて噴霧消火設備の起動及び放圧板が動作したことも確認されており、その原因はいまのところ不明とされる。火災は発生しなかった。 
 
 当初、油漏れは1号機側で3600リットル、2号機側で3500リットルと発表されたが、1月7日になって回収した量から計算した値として、19,800リットルの漏えいがあったと上方修正されている。 
 原発ではこうした訂正が常だ。 
 外部電源は、2号機が27.5万kwの1回線で受電しており、1号機は6.6万ボルトの1系統1回線で受電している。 
 
 6台の非常用ディーゼル発電機は1台が定期検査中、5台が待機中で、別に高圧電源車2台も待機中という。 
 プール水は、地震発生時のスロッシングにより一部が漏えいしたものの、水位は保たれている。 
 その量と放射能は、1号機が95リットルで合計17,100ベクレル、2号機で約326リットルで含まれる放射能量は約4,600ベクレルという。外部への漏えいはしておらず放射能の影響はないと北電は発表した。 
 燃料プールへの水の補給は、ポンプが一時停止したものの、直ぐに復旧しており継続中。 
 
◎柏崎刈羽原発への影響 
 
 柏崎刈羽原発は震源からは120kmほど離れている。地震の揺れは志賀原発よりも小さいく3号機の原子炉建屋基礎マット上では87.1ガルである。 
 しかし長周期揺れの影響で燃料プール水がスロッシングであふれだした。2、3、4、6、7号機で起きている。 
 最大は6号機の0.6トンだった。また、一部の火災報知機が警報を鳴らしたが、いずれも誤報と判断している。 
 外部への放射性物質の拡散は確認されていない。モニタリングポストも正常値という。 
 
◎危機的事態は回避したが・・・ 
 志賀原発が稼働していなかったから 
 
 志賀原発が過酷事故を起こさずに済んだのは、原発が稼働していなかったことが最大の理由だ。 
 原発には使用済燃料プールに燃料体が1号機で672体、2号機で200体ある。 
 電源喪失などで冷却水の枯渇がなければ冷却不能になることはないが、ここに震度7クラスの地震が襲いかかれば危険な事態になりかねない。 
 外部電源の一部が使用できない状態になったのは、多重防護の考え方からすると欠陥だ 
 
◎大地動乱の事態に原発は廃炉にするべき 
 
 『大地動乱の時代』は、1995年1月17日(まもなく19年になる)の阪神淡路大震災を経験した地震学者石橋克彦神戸大学名誉教授の警告の書だ。 
 「原発震災」を警告した書でもある。 
 
 プレート境界の力が日本列島の断層に大きなストレスをかけ続けてきた。東日本太平洋沖地震を挟んで、日本海側でも大きな地震が次々に起きている。 
 志賀原発や柏崎刈羽原発に続いて、福井県内の原発にも危機は迫っていると考えるべきだ。 
 折しも5基の原発が稼働中の若狭湾。ここにも大きな断層がいくつもある。 
 さらに老朽原発美浜3号機も動かそうとしている。高浜1、2号機も稼働している。 
 
 「南海トラフ地震」の切迫度も高まっているとみられ、その前後には内陸地殻内地震も多発すると考えられる。 
 その中で原発のすぐ近くを通るのが、中央構造線の直ぐ側の伊方原発、宍道断層に近い島根原発、日奈久断層系に近い川内原発、警固断層に近い玄海原発、これら再稼働している原発についても、南海トラフ地震等の地震により原発震災に至る危険性が高い。 
 
 もちろん、日本海溝沿いの巨大地震や内陸地殻内地震により被災する危険性は、六ケ所村再処理工場、同高レベル放射性廃棄物貯蔵施設、女川原発、東海第二原発、東海再処理工場の高レベル放射性廃棄物貯蔵施設など、沢山あることを忘れてはいけない。 
 地震は止められないし、対策も限界がある。 
 災害を最小限に食い止めるには、原発を「止める、冷やす、閉じ込める」対策を、今から実施するほかはないのである。 


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