2024年01月18日10時48分掲載
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人類の当面する基本問題
「CO2温室効果が温暖化・気候変動の原因」の問題点:再論 落合栄一郎
気候変動に関して、何回か小論を発表した [1, 2, 3, 4]。[4]では、CO2その他の温室効果ガスが温暖化の原因であることの間違いについて簡単に検討した。今回は、それをもうすこし詳細に考えてみる。
(1)気候が変動することは、自然現象で、地球の歴史上常に起こっているものである。その原因には様々なものがある。天体、特に太陽からの影響の変化―それには、太陽そのものの活動の変化と、太陽と地球との相対位置の変化がある。こうした原因が、歴史上の気候変動に関与しているというデータは、十分にある。大洋水温の変動(エルニーニョ現象など)、その他も気候変動をもたらす。
(2)まあ、それにしてもここ2世紀ぐらいの気候変動には、人間が排出している温室効果ガスが関与しているのではないか。というのが現在の気候変動主張者たちの論であり、主として温室効果ガスと言われるCO2、CH4などが問題とされている。そこで、こうしたガスを排出する原因をなくすべきである、という考えが、現在の気候変動問題の根本にある。この考えは、大多数の人々を洗脳してしまい、何かあると、直ちに、「CO2を削減しなければ」となる。
実は地球の過去5億年ほどの気温の変化と大気中のCO2濃度の変化には何らの相関性もない。ただし、過去80万年ほどの気候変動(氷河期と間氷期がやく10万年ほどのサイクルで繰り返されたーミランコヴィッチサイクルと言われる)期の気温、CO2、CH4の変化を詳細に検証したデータがある[4, 5]([4]での図1)。このデータは、温度変化と温室効果ガスの変化が非常によく似ていて、この温室効果ガスの変化が気温の変化をもたらしたと主張されたのですが、実は詳細によく見てみると、実は温度が変化すると少し遅れてCH4、CO2が変化しているのである。すなわち、温室効果ガスと称されるもの動きは、温度変化の原因ではなく、むしろ結果なのです。すなわち、温度が上昇したら、大気中のCO2の濃度が上がる、気温が下がれば、CO2濃度が下がる。こうした事実は、近年ではより詳しく観察されている(図1)[6]。
(3)人為気候変動扇動者の主張した、例えば、温暖化のために2020年ぐらいまでには、海面が上昇し、大都市が住めなくなるなどのとんでもない予測は起こっていない。彼らの人々を驚かす気候変動予測は、ほとんど実現していない。こうした扇動は、2023年の高温に基づいて、国連事務総長までが、「温暖化は終わった、沸騰化だ」などとまで言っている。こうした主張の根本には、温室効果ガスの効果のシミュレーションといういい加減な方法に基づいた「温暖化人為説(CO2その他の温室効果による)」が定着させられてしまっているからである。
2023年は、過去最高温度を記録したとされていて、温暖化(人為的原因による)のせいだ!と騒がれている。2024年1月初旬、米大陸では、異常な低温に見舞われている。1月11日には、突如の降雪、翌日12日には、バンクーバーは、1日の最高気温が記録的低温(-13 度)、この州(カナダ、BC州)のどこでも記録的低温(-30から-50度ぐらいまで)になった。米国中西部も記録的低温に見舞われている。こんな急激な気象の変化、CO2のせい?
中世温暖期(人為CO2増加なし)には、グリーンランドでも草木が生え、ヨーロッパのヴァイキング達は、グリーンランドに住み、そこを経由してアメリカ大陸に、コロンバスより数世紀も早く、移住していたことがわかった [7]。その後、寒冷化が進み、グリーンランドは、雪と氷に覆われるようになった。こんな大きな気候変動もCO2の増加で起こったわけではない。
(4)さてその温室効果ガスであるが、CO2は現在の大気中に0.04%ほどしかない。しかも、地球から発する赤外線のほんのわずかな部分しか吸収しない。ところで、大気の大部分(99%)は、窒素と酸素である。これらは、赤外線を吸収しない。ということで、温室効果(保温効果)には寄与しないということになっている。
実際の温室を見てみると、外から入ってきた太陽光が、土その他の内部を熱する、それが熱線(赤外線)を出し、ガラス窓という温室効果ガス相当のものが、熱が外部に漏れるのを半減しているというのが、まあ温室効果の現象とされている。本当にそうであろうか。この場合、温室中の空気はどうなっているのであろうか。空気は、熱により、温度が上昇する。どうしてか。それは、空気中の窒素、酸素分子が、熱によって、運動が激しくなるからである。実は、この効果が、温室内の温度を維持する主要な作用なのである。すなわち、熱は、空気によって保持されるのである。
実は、現在の地球の大気(下層部)の温度は、やく150Cぐらいであるが、この温度は、大気(窒素、酸素)の運動によって保持されていることも、証明されている [7]。
この現象は、対流現象 (convection)としていくらかは、主張されてはいるが、主流にはなっていない。筆者は、このことに関して簡単な考えを以前投稿した [4]。
なお、大気には温室のような囲いはない。ですから、大気は、地上から(太陽からも)の熱で温められるが、その熱は、囲いがないので、どんどん上に逃げていく。下からの熱の供給と上層への逃避が平衡になって、温度はおおよそ定温になっている [8]。それが地球全体で見ると約15oCである。このことは、現在の大気のN2、O2の量(密度)と気圧の関係から、気体の法則(PV=nRTという高校で習う)からも検証されている [9]。これは、大気中の分子N2/O2の運動に基づいている。なお、これは、大気圏の下部、地表からあまり高くないところでのこと。大気圏の上層部で、空気が希薄になれば、温室効果ガスなどによる赤外線吸収の作用も重要になってくる。
(5)こうしたことから、いわゆる温室効果ガスCO2、CH4、N2Oの影響は、大気下層部では無視できるほど小さく、温暖化・気候変動の主な原因ではあり得ない。それらの排出を制限すること(グリーン化と称されるが、とんでもない)によって気候変動を抑止できるという主張は根本的に間違っている。排出削減を脱炭素・NetZeroなる方向に持っていくことは、別な観点から、とんでもない間違いでもある。それは:
(6)地球上の全生命は炭素化合物で出来ている。すなわち、炭水化物、脂肪、タンパク質、DNA、RNA、ビタミンなど全て炭素化合物で、植物は、それら(主として炭水化物)をCO2、H2Oから太陽光のエネルギーを使って合成している(光合成)。そして動物達は、植物(炭素化合物)を消化して、自分達の体を作り、日々のエネルギーを作り出している。したがって、NetZeroとか脱炭素などということは根本的に間違っている。本当にNetZeroなどに到達したら、地球上の全生命は消滅せざるを得ない。
実際は、CO2排出が増えたため、植物の生産量が増えつつあるという観察データもある[10]。大気中CO2上昇は、むしろ望ましいことである。
(7)さてグリーンエネルギーとされる水素問題について少し。水素を燃やしてエネルギーを得る際に出来るものが水で、きれいであるからである。まず水を分解して水素を作り出し、その水素を使って、交通手段などを動かそうというわけである。根本的に見てみると、水を分解(2H2O->2H2 + O2 (a))して作った H2 を燃やしてできるエネルギー (2H2 + O2 -> 2H2O (b))を利用しようというわけです。理想的には、(a)で使用したエネルギーを、(b)で使うので、プラスマイナスゼロ。何の得にもならないがクリーンではある。実際は、(a)で使われるエネルギー値は、(b)で得られるエネルギー値よりかなり大きいことになる。すなわち、水素エネルギーは、トータルに見てみれば、エネルギー効果をあげるには何らの効果もない。その上、水素を作るための高温ガス炉の技術:安全性が十分かは考慮されているかは疑問、そして基本的には(発電効率が良くなるので燃料使用量は少なくなるとはいえ)高放射性排気物が出るには違いない。
なお、水の分解 (a)は、高温でないと熱力学的に不可能。ただし、高温になれば、(a)が簡単に起こるかといえば、そうではない。様々な化学反応を通じて起こさせる。現在は、数種の方法が試されている。複雑な反応の組み合わせで、通常運転で、スムーズに、安全に運営できるか、環境に悪影響はないか、などなどまだ不明。
(8)以上の議論から、CO2、CH4、N20削減を目的にした政策は、実は無意味なのだが、人々は、人類の将来を救うためにはそうせざるを得ないと思わされてしまっている。そのため、あらゆる企業、報道機関は、脱炭素を掲げることで、気候変動主張者に阿り、一般市民を欺いている。気候変動主導者達、いやそれに乗せられている行政を司る人達の考え、実行に移す政策たるや、とんでもない、馬鹿げた負担を人々に強要することになっている。そうしたことの一部は、[1, 2]で議論した。詳しくは別の機会に。
図1ハワイでの気温変化と大気中CO2濃度の変化([6]より引用)
[1] http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=202208221011251
[2] http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=202307131036544
[3] http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=202304131332484
[4] http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=202309071356404
[5] Ed Brook, Nature, 435, 2008.05.15; https://www.nature.com/articles/453291a.pdf
[6] 根本順吉、「超異常気象」(中公新書、1167, 1994)図8-12, p213
[7] https://blog.goo.ne.jp/syokunin-2008/e/ff86d23e038404d8f6ee78400d1efd1c
[8] T. Allmendinger, The Real Cause of global Warming and its Consequences on Climate Policy, SciFed Journal of Global Warming, 2018, 2:1
[9] Robert Ian Holmes, Earth Sciences, 2017; 6(6): 157-163; 2018; 7: 107-123
https://doi.org/10.11648/j.earth.20170606.18
[10] https://www.naturalnews.com/2024-01-15-many-climate-scientists-favor-higher-co2-levels.html
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