2024年04月03日20時21分掲載
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核・原子力
能登半島地震であぶり出された柏崎刈羽原発の持つ危険度 使用済燃料輸送の強行は認められない(下) 山崎久隆
柏崎刈羽原発には地震の後に津波も襲ってきていた。ところが原発からは津波情報は奇妙なことに全くない。報道発表もない。柏崎市鯨波では0.4m、上越市では高さ6mの内陸部にまで到達して
いた。しかし原発の記録には示されていない。
◆津波による危険性を軽視する東電
新潟日報は1月12日記事で東電発表として「津波については潮位計がないため正確な数字は分からないとしつつ、トンネルを通じて海水を引き込んでいる敷地内の取水槽で上下1mの水位変動があった」と報じている。
柏崎刈羽原発には潮位計は設置されていない。取水槽の中の水位だけで見ているのだとしたら、ここがスケールアウトしたら波高が分からなくなる。専用港などに潮位計がないとは危機管理として失格だ。
東電の説明は「福島第一原子力発電所の事故の教訓を踏まえ、発電所の到達が想定される最も規模の大きい津波高さ約7〜8mに対して、海抜約15mの防潮堤を設置するとともに、非常用ディーゼル発電機がある建屋の入り口を水密扉にするなど浸水防止対策を行っています。」とのこと。
言い換えれば、15mまでの津波については考えもしないということ。
しかし引き波の影響や、使用済燃料、低レベル放射性物質輸送船の津波の影響は15m以下であっても大きい。
特に使用済燃料輸送船は吃水の深さが8mだから、8mつまり柏崎刈羽原発が想定している「十分発生しうる津波」でも座礁、擱坐、沈没の危険性があるのである。
これに対する答えは「大津波警報が出れば直ちに緊急出港する」
という。しかしこの緊急出港は少なくても10分以上かかる。今回の能登半島地震では大津波警報発表からわずか1分、場所によっては発表前に既に到達している。
しかし東電は、原発敷地の目の前で起きうる地震により発生する津波の到達には15分かかるとして、荷役作業中でなければ緊急出港は間に合い、荷役作業中ならば最初の第一波に直撃されるが吃水が深いから岸壁を越えない、または二重船殻構造(船体が二重構造)だから浸水しないなどとしている。
しかし二重船殻構造の船はタンカーなど多くあるが、沈没するときはしている。
また、岸壁は津波が吃水を超えれば乗り上げるのは当たり前。
さらに引き波により海底を引きずられながら沖に流された場合、海底との接触で船体はズタズタにされるだろう。
米国の核弾頭搭載可能な攻撃型原子力潜水艦「サンフランシスコ」は、2005年1月8日、グアム島南方海中を潜行航行中に海山と衝突、船体の先端部分が大破している。この艦は二重船殻構造であり、船舶の中で最も強固に建造された船だが、海底との接触で船体は大破している。沈まなかったのは不幸中の幸いだった。
二重船殻構造をもつ核燃料輸送船でも引き波で海底を引きずられる場合は、同様に破壊されると考えるべきだ。
◆使用済燃料輸送と再稼働を止めよう
東電は3月27日と28日に二つのことを発表している。
一つは27日、青森県むつ市にあるリサイクル燃料貯蔵(RFS・東電と日本原電の合弁会社)の中間貯蔵施設に向けて今年7月から9月に最初の貯蔵容器1基を送ると発表したこと。
もう一つは28日、柏崎刈羽原発7号機の圧力容器に燃料体を装荷する許可を規制庁に申請し、4月15日までに装荷を完了すると発表したことだ。
いずれも再稼働への動きとされるが、最初の使用済燃料輸送は再稼働とは関係ないし、再処理工場の完成がいつになるか不明確な今、原発の運転に際して輸送する必要性はない。
唯一の「理由」は、核燃料サイクルが稼働していて、東電の再稼働と中間貯槽、そして再処理が一連の事業として成り立っているかの見せかけと、もう一つはRFSが今年度中に使用前検査を終了し、事業段階に入ったことにしたいためだ。
使用前検査は規制庁が行うが、そこには実際に燃料体が入った貯蔵物が必要である。
RFSが事業段階に入ったところで、現時点では2025年度は2基、2026年度は5基を運び込む。
このため輸送の量もこれに応じて増えることになり、津波や地震などのリスクも同じだけ増える。
むつ市関根浜港はRFSへの燃料を陸揚げする荷役港だが、ここもまた地震と津波のリスクが大きい。下北半島北岸も断層による隆起地形であり、地震と津波の発生が危惧されている。
柏崎刈羽原発と大間の港、いずれも日本海の地震活動の活発化に伴いリスクが高まっているときに、使用済燃料輸送を強行するなど認められない。
柏崎刈羽原発の再稼働も同じ日本海の変動帯(新潟−神戸ひずみ集中帯)中にあり、能登半島地震の影響で活動が活発化していると考えられる。同じく再稼働をしてはならない。
これは同時に、若狭湾の原発、島根原発にも当てはまる問題である。
(たんぽぽ舎共同代表)
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