2024年04月17日23時33分掲載  無料記事
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検証・メディア

経済安保情報保護法案、新聞労連が反対声明  記者活動、報道の自由も抑圧のおそれ

 「重要経済安保情報保護・活用法案」、いわゆる経済安保にかかわる秘密保護法が、一転して賛成に転じた立憲民主党の動きもあって国会での審議があわただしく進んでいる。そうした中で新聞労連が4月15日、反対声明を出した。同法案は新聞・雑誌、放送、ネット記者などジャーナリストの取材、執筆活動にも影響する内容を含んでいる。もちろん日刊ベリタも例外ではない。(大野和興) 
 
 経済安保情報保護法案は「特定秘密保護法」は主として公務員を対象にしたものですが、民間にまで拡大するもので、経済安全保障に関わる民間人の身辺調査をかけ、情報を漏洩したものには拘禁刑が用意されている。 
 
 また経済安保に関わる民間人については調査の対象となるが、その範囲は、国籍、家族情報、犯罪歴、飲酒歴、精神疾患の有無にも及ぶとされ、深刻な人権侵害が予測される。 
 
 こうした経済安保という日常の経済、社会活動が対象となる分野における情報の収集、伝達を仕事とするメディアやそこで活動するジャーナrストが発信する情報も当然国家の監視対象となる。 
 
 新聞労連の声明はそのことを以下のように表現している。 
「公益性のある情報を明らかにした記者や市民が刑事責任を問われる懸念は拭えません。市民の知る権利の制限や報道の自由の萎縮につながりかねない新法案に私たちは反対し、廃案を求めます。」 
 
 以下、新聞労連の反対声明の全文を紹介する―― 
 
 
経済安保情報保護法案に反対する 
〜秘密の恣意的拡大は報道・内心の自由を侵す〜 
 
 2024年4月15日 
日本新聞労働組合連合(新聞労連) 
中央執行委員長 石川昌義 
 
 経済安全保障上の重要情報を扱う民間事業者を身辺調査するセキュリティー・クリアランス(適正評価)制度を導入する「重要経済安保情報保護・活用法案」の国会審議が大詰めを迎えています。新聞労連をはじめ、幅広い反対運動を無視した強行採決の末に2014年に施行された「特定秘密保護法」を実質的に拡大する新法案は、調査対象が民間人に大幅に広がり、秘密の範囲も拡大します。プライバシー侵害だけでなく、公益性のある情報を明らかにした記者や市民が刑事責任を問われる懸念は拭えません。市民の知る権利の制限や報道の自由の萎縮につながりかねない新法案に私たちは反対し、廃案を求めます。 
 
 特定秘密保護法は、政府が指定できる「特定秘密」を、漏洩すると日本の安全保障に「著しい支障」の恐れがある防衛、外交、スパイ防止、テロ防止の4分野に限り、適正評価の対象も情報を扱う公務員が中心でした。「サイバー」「規制制度」「調査・分析・研究開発」「国際協力」の4分野を対象とする新法案は、適正評価の対象者が防衛産業以外の幅広い民間事業者や大学を含む研究者にまで拡大します。また、漏洩すると安全保障に「支障」の恐れがある情報を政府が「重要経済安保情報」に指定できるようになり、「政府が恣意的に秘密の範囲を指定できる」と強い批判を受けた特定秘密保護法より一層、規制対象になる情報の定義があいまいになる懸念が強まります。 
 
 情報漏洩には5年以下の拘禁刑などの罰則が設けられます。機械メーカー「大川原化工機」(横浜市)の社長たち3人が、軍事転用可能な機器を無許可で輸出したとする外為法違反容疑で逮捕、起訴され、後に起訴が取り消された事件のような捜査権の濫用による重大な人権侵害を続発させる恐れがあり、権力の暴走を加速させかねません。 
 
 セキュリティー・クリアランス制度の調査範囲は、国籍、家族情報、犯罪歴、飲酒歴、精神疾患の有無にも及びます。調査には本人同意が必要とされていますが、従業員が業務に関連して情報を漏らした場合は企業にも罰金を科されるため、同意しなかった場合には懲戒処分や配置転換などの不利益な取り扱いも懸念されます。労働者保護の観点からも重大な問題があり、内心の自由や表現の自由を侵す危険な法案です。4月9日の衆院本会議で自民、公明、立憲民主党などの賛成多数で可決しましたが、今後の参院での審議で新法案の問題点を徹底的に明るみ出すことを求めます。 


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