2024年06月04日01時47分掲載  無料記事
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永住資格取消拡大法案に当事者らが反対 人間の尊厳をバーターにするようなことが許されるはずがない

 現在、参議院での審議が進められている改定入管法案について、同法案で進められようとしている永住資格の取消拡大に反対する当事者や弁護士らが、6月3日に横浜市内で講演会を開催した。同講演会では、入管難民問題に取り組む駒井知会弁護士が登壇し、同法案について、「必要のない条文を作って、不必要に入管の裁量を広げようとしている」と、その在り方を問題視した。 
 
 永住資格の取消拡大については、有識者会議による事前の議論の中でほとんど触れられないまま、突如として政府が公表した骨子に盛り込まれた経緯がある。これについて、駒井弁護士は「法改正で永住者が増えることに危機感を抱いた与党の一部の議員を納得させるために、永住者を減らすことができるという趣旨で、このような制度が盛り込まれたと推察される」と説明。その上で、「人間の尊厳を何かのバーターにするようなことが許されていいはずがない。日本社会に生きる日本人として、このような法律を通させるわけにはいかない」と、強い口調で語った。 
 
 本法案については、横浜華僑総会などの中国籍の永住者からなる団体が、連名で岸田文雄首相や小泉龍司法務大臣宛の陳情書を提出し、永住資格取消事由の拡大に関連する条項の削除を求めている。また、5月30日には、横浜華僑総会名誉会長の曽徳深氏が、参議院法務委員会における参考人質疑に出席し、永住資格の取消事由が拡大されることに対する中国籍の永住者の思いを代弁して語った。3日の講演会に参加した曽氏は、「この法案を通してはいけないし、通させない努力をして、それを多くの人に知ってもらうことが大事である」と述べ、同法案を今後も問題視していく姿勢を見せた。 
 
 永住資格の取消事由の拡大については、在日本大韓民国民団も4月に声明を発表し、「入管法改定は、永住者の生活、人権を脅かす重大事案」であるとして是正を求めている。永住資格を有する当事者から、法案を問題視する声が上がる中、このような声を無視したまま、同法案が成立するようなことがあってはならない。真の共生社会の実現に向け、今一度、国会における当事者目線での真剣な議論が求められている。 


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