2024年06月22日23時57分掲載  無料記事
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核・原子力

「核のごみ」最終処分の検討方法に疑問の声

 特定放射性廃棄物、いわゆる「核のごみ」の最終処分場施設の建設をめぐり、6月17日、第4回特定放射性廃棄物小委員会(※1。以下、小委)が開催された。小委は、地層処分を推進する経産省とその事業者である原子力発電環境整備機構(NUMO)の担当職員が、各委員と最終処分の方法や今後の方針などについて意見交換をする場であるが、その議論のあり方について疑問を呈する声が相次いでいる。 
 
 地層処分に関しては、北海道寿都町及び神恵内村でその調査過程である文献調査における文献の収集が既に終了しており、現地住民に対する対話の場の振り返りも終えている。4月30日に開催された、第3回特定放射性廃棄物小委員会(※2)では、NUMOから対話の場における聞き取り調査を踏まえた報告がされた。この第3回小委の様子を視聴し、同聞き取り調査を受けた寿都町民から、「議題の説明に会議時間の半分も費やしており、各委員の発言が限定的になっている」として、経産省及びNUMO側を批判する意見書(※3)が第4回小委で提出された。 
 
 地層処分を巡っては、技術的な観点を議論する場である地層処分技術ワーキンググループ(以下、地層処分WG)も随時開催されている。3月29日に開催された第2回地層処分WG (※4)においては、約300人の地質学者らが発表した「世界最大級の変動帯の日本に地層処分の適地はない」とする声明(※5。2023年10月発表)についての議論がなされており、同声明の呼びかけ人である北海道教育大学名誉教授の岡村聡氏、北海道大学名誉教授の小野有五氏及び新潟大学名誉教授の赤井純治氏は、同WGに参考人として出席し、経産省及びNUMOが進める地層処分の危険性を強く主張した。 
 
 その後、地層処分WGにおいて、同声明を踏まえた技術的・専門的観点の審議報告(案)がまとめられたが、上記の3名は、「私たちが提起した問題が十分に議論されないまま一方的に審議が終了した」として、地層処分を前提としたWGのあり方を批判していた。こうした経緯を踏まえ、第4回小委には、「地層処分WGの審議報告(案)に対する見解」(※6)を提出し、暫定的な地上保管などを主張するとともに、根本的な議論を展開する場の必要性を訴えた。 
 
 原子力資料情報室は、6月20日、第4回小委の審議の内容を踏まえたオンライン記者会見を開催。同会見には、委員でもあり原子力資料情報室の高野聡氏、岡村氏及び小野氏が出席し、これまでに開催された地層処分WG及び小委の審議のあり方を指摘するとともに、地層処分を前提とする最終処分の危険性を主張した。 
 
 同会見で小野氏は「最終処分場については、『核のごみ』の10万年間に渡る安全性を議論している。各々に異なった見解があるのは当然で、各委員の発言が2分で済まされる審議会の運営はおかしい」としつつ、「地層処分をしてはいけない理由は、危険な『核のごみ』を10万年もの間地下で安全に保管できる技術が現代にはないからだ。『次の世代に対する責任』とよく言われるが、24時間監視体制のもと、暫定的に地上保管をしつつ安全と言える保管方法を模索することが、今の世代が取れる責任」と主張。また、岡村氏は、経産省及びNUMOの審議の進め方を批判しつつ、「地上保管に対する危険性が指摘されるが、それを言うならば地上にある原発そのものが危険」とした。 
 
 会見の最後に高野氏は、「各委員の発言時間が2分程度しか与えられていなく、経産省はメールによる追加意見も聞き入れている』としているが、その意見は呼びかけ人の個別具体的な問題に答える内容ではない。この程度の発言しかできないような審議会でどれだけ活発な議論ができるか」と委員としての思いを語った。 
 
 地域住民に十分な説明を尽くさず、地質学者らの意見も蔑ろにしているとなれば、経産省及びNUMOが地層処分ありきで強引に議論を進めようとしているのは明らかであろう。何のための審議会か、今一度よく考えるべき時ではないか。 
 
【以下、リンク先URL】 
(※1) 
第4回 特定放射性廃棄物小委員会(METI/経済産業省) https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/radioactive_waste/004.html 
(※2) 
第3回 特定放射性廃棄物小委員会(METI/経済産業省) https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/radioactive_waste/003.html 
(※3) 
寿都町対話の場意見書 
https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/radioactive_waste/pdf/004_s06_00.pdf 
(※4) 
第2回 特定放射性廃棄物小委員会 地層処分技術ワーキンググループ(METI/経済産業省) https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/radioactive_waste/geological_disposal/002.html 
(※5) 
声明「世界最大級の変動帯の日本に地層処分の適地はない」 
https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/radioactive_waste/pdf/004_s01_00.pdf 
(※6) 
「地層処分WGの審議報告(案)に対する見解」 
https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/radioactive_waste/pdf/004_s05_00.pdf 


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