2024年06月30日12時16分掲載
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アジア
福岡市が軍政下のミャンマーからアジアゾウの受け入れを検討 在日ミャンマー人が受け入れ中止を求め公開質問状を提出
ミャンマーの最大都市ヤンゴンと姉妹都市関係にある福岡県福岡市が管理する「福岡市動物園」が、ヤンゴン市の動物園からアジアゾウ4頭の受け入れを検討している問題について、本国の民主化を掲げる一部の在日ミャンマー人は「国軍のプロパガンダに利用される恐れがあり、受け入れを中止すべきだ」と反発している。
これについて、都内で暮らす在日ミャンマー人のミンスイさんらは25日、福岡市動物園を訪問し、「軍評議会からのゾウ受け入れに関する公開質問状」を提出。アジアゾウの受け入れを見直すよう担当者に求めた。現在、福岡市動物園からの回答を待っているとのことだ。
以下、「軍評議会からのゾウ受け入れに関する公開質問状」(6月25日付)の一部を掲載する。
〈軍評議会からのゾウ受け入れに関する公開質問状〉
報道によりますと、福岡市動物園が交流事業の一環としてミャンマー軍評議会(国家行政評議会) からゾウを7月にも受け入れると言われています。このことは、軍評議会と福岡市・日本とのいつわりの友好関係を宣伝することになりかねず、我々在日ミャンマー人はこのニュースに大きなショックを受け、憤りを感じています。このままでは我々が抱く懸念が現実のものとなってしまうため、福岡市の姿勢について質問したく思います。
ミャンマーでは2021 年の軍事クーデター以降、軍評議会が市民を弾圧し、民間人へ容赦のない空爆を行うなど深刻な人権侵害が行われています。市民団体の調査では、確認できるだけでも5200人以上が軍評議会によって殺害され、2万6800人以上が不当に拘束されました。激しい内戦により国内避難民の数も300万人を超えたと国連が報告しています。このような中では、我々在日ミャンマー人は、軍評議会からのゾウを歓迎するような気持ちにはとてもなりません。
ヤンゴン動物園との交流事業は、民主政権時代の2019年に覚書が交わされたことは承知しています。しかし、ミンアウンフライン総司令官が率いる軍評議会は2021 年のクーデターで民主政権から権力を奪い、福岡市のカウンターパートである自然資源・環境保全省やヤンゴン市を支配下に置くなど、状況が大きく変わりました。このことを無視して、民主政権時代の約束なので問題がないとする見方には同意できません。またゾウを贈ることは、ビルマでは王朝時代から外交手段として用いられており、こうした歴史的な文脈から、軍評議会はこのことを最大限政治利用しようとするはずです。軍評議会を通してゾウを受け取ってしまえば、「軍評議会と日本とは友好関係にある」「日本は軍の統治を支持している」「ゾウは総司令官が日本の求めに応じて寄贈した。日本人は喜んでおり、総司令官はそれだけ偉大な人物である」などと曲解され、国営メディアなどを通じて日本側の意図とは異なった宣伝をされかねません。もとより、ゾウに会いに動物園を訪れる子どもや、ゾウ自身には罪があるわけではなく、「独裁者からもらったゾウ」として認識されてしまうことは、とても不憫です。また来場者がゾウを見て、ただかわいいとだけの感想をもち、ミャンマーで起きている悲劇について正しく理解できないような公開方法になることも懸念しています。
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