2024年07月12日22時38分掲載  無料記事
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沖縄/日米安保

辺野古新基地建設 土砂運搬中の事故 被害者への対応に疑問

 6月28日、政府が進める辺野古新基地建設工事に関連した死傷事故が発生した。米軍普天間飛行場の移設先で使用する土砂の搬出作業中に起きたこの事故で、土砂を積んだダンプカーと、付近で新基地建設の抗議活動をしていた女性が接触して重症を負い、当時警備中であった警備員の男性も事故に巻き込まれ死亡した。 
 
 事故が起きた後、「『止めよう辺野古埋立て』国会包囲実行委員会」及び「辺野古土砂搬出反対全国連絡協議会」(以下、「土砂全協」)らの市民団体は、7月11日、議員会館において、移設工事に伴う政府の「代執行」や大浦湾の埋め立てに異議を唱える政府(防衛省・環境省)交渉を実施。死傷事故が起きた直後に行われた今回の政府交渉には、移設工事に反対する市民が100人以上も集まり、会場は満席となった。 
 
 同政府交渉では、「沖縄平和市民連絡会」の北上田毅氏と「土砂全協」の湯浅一郎氏の2人が中心となり、事前に提出した質問書に沿った形で政府側に対して移設工事に関する問題点を追及した。死傷事故に関しては「ダンプカーの出入りに対してどのような安全確認を講じてきたのか」「亡くなられた警備員の方への弔問や負傷した女性に対してお見舞いや謝罪は行われたのか」との質問がされた。 
 
 これに対して移設工事の作業主体である防衛省側は、「詳細については、現在、沖縄防衛局において確認中であり答えられない」「このような事故が発生したことについては誠に遺憾であり、事故の状況等を踏まえて適切に対応する」などと実質的なゼロ回答を繰り返した。この回答を受けた北上田氏は「これだけの事故が起きたにも関わらず、あまりにも無責任な発言にしか聞こえない」と批判。 
 
 また、交渉中にゼロ回答を続ける防衛省側に対して、北上田氏が改めて死傷した2名の被害者に対する弔問や見舞いが行われたか否かを確認すると、これについても同省側は、「今後、事故の状況を踏まえて適切に対応する」との回答を繰り返した。こうした防衛省側の対応に、参加者からは「弔問や見舞いをしたのかしていないのかを聞いている」「『適切に対応する』を繰り返すばかりではなく具体的な回答をしてほしい」との声が上がった。 
 
 死傷事故が起きたことを受け、林芳正官房長官は、事故発生現場である安和桟橋と本部塩川港の2カ所で埋め立てに使う土砂の搬出作業を中止することを表明したが、一時的な作業の中止をもって今回の事故の幕引きを図ろうとする政府の思惑が見え隠れするようである。 
 
 今回の政府交渉における防衛省側の反応から、被害者への弔問及び見舞いを未だに行っていないと推測されるが、まるで死傷事故は起きていないかのような振る舞いで作業が再開され、移設工事が強行されることがあってはならない。地元住民の反対意見、不安の声は増すばかりである。 


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