2024年08月03日02時38分掲載  無料記事
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入管

仮放免の子どもたちによる絵画作品展開催 私も自由が欲しい

 「仮放免」の子ども達の作品を展示する「絵画作文展」が、東京都練馬区内の練馬区立男女共同参画センターで開催されている。主催は、「入管を変える!弁護士ネットワーク」。通算4回目となる今年の展示会のテーマは「私のふるさと」。8月2日に開催された表彰式では、審査員を務めた直木賞作家の中島京子氏と哲学者の永野潤氏の口から、絵画と作文のそれぞれの作品について、大賞や審査員賞が発表された。 
 
 今回展示された絵画作品は25点。大賞は、中央アジアにルーツを持つ中学生の作品で、審査員の永野氏は「カラフルな色使いで建物を描いており、審査員が全員一致で選んだ作品」と紹介した。さらに、中島氏と永野氏の両氏が、絵画作品について2作品ずつ選定した審査員賞を発表。中島氏は、自身が審査員賞に選んだ中東にルーツを持つ小学生の作品について「『夏と冬』というタイトルで、『私の心の中は暑い夏と寂しい冬の両方があります』とコメントが付されており、詩的なイメージが素敵だと感じた」と解説した。また、永野氏は、選定した中東にルーツを持つ高校生の絵画作品について「『楽しくないから色はつけない』と付されていたコメントが印象的であった」と紹介。さらに、作中に書かれている「自分たちのそばにいるのに気にしない人」、「助けたいけれど何もできない日本人」、「見ているけど気にしていない」という文章について、「入管職員と外国人の問題ではなくて、日本社会の問題だということを突き付けられているように感じた」と、作品から受けた印象を語った。 
 
 作文は、3点が展示された。大賞は「メッセージ」と題された作品。「6年生の時に、自分の生活だけ学校にいるみんなと違うことに気づいた」といった文章で始まり、「風をひいても簡単に病院に行くことができない」「ビザがないため、他の国に行くことができない」「親が働けないため、(学校の授業で)親の職業が紹介できない」と、日本国籍や在留資格を有する子どもたちとの“違い”について、自身が経験した出来事が丁寧に描写された作品となっている。文章の最後には「私も他の友達のように自由が欲しいし、飛行機に乗れる権利が欲しい。これをたくさんの人が聞いて、私たちの気持ちを知って、ビザの管理人(入管)までメッセージが届くと嬉しい」という率直な思いも綴られていた。 
 
 政府は、昨年8月に在留資格がない日本生まれの子ども達に在留特別許可を付与する方針を示したが、未だに在留特別許可が付与されるべきであるのに、付与されていない者も多く存在している。このような状況に絵画作品展を主催した「入管を変える!弁護士ネットワーク」の指宿昭一弁護士は、「昨年からこの一年間で、一定数の仮放免の子どもに在留特別許可が出たが、今我々が忘れてはいけないことは、そこから漏れてしまった子供たちがたくさんいるということである。入管は、ほとぼりが冷めたころに、これだけ在留資格を出しましたという発表をして、終わりにしようとしているが、それではいけない。まだ、終わっていない」と語った。 
 
 8月末には昨年の絵画作文展の受賞作品「私は十五歳」が絵本として書籍化され、出版が予定されている。夏休み期間中であっても、気軽に県外移動ができないなど、制限の多い仮放免の子どもたち。どのような思いを抱きながら日本で生活しているのか。絵画や作文、今後出版される絵本を通じて、ぜひ感じ取って頂きたい。展示会は8月4日まで開催予定。 
 
◯ 絵本「私は十五歳」https://imaginationpluspress.com/booklist 
◯ 入管を変える!弁護士ネットワークHP https://www.kaerunet.net 
〇 BOND・Xアカウントhttps://x.com/nanmin_bond?s=21&t=aHxo9EwFt8Ho_vnxRERX5A 


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