2024年08月08日21時22分掲載  無料記事
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反戦・平和

靖国合祀問題 遺族による闘いはつづく

 8月3日、東京都内で靖国合祀問題に焦点を当てた集会が開催された。主催したのは、「『平和の灯を!ヤスクニの闇へ』キャンドル行動実行委員会」で、「あなたは祖国のために戦えますか?~自衛隊と殉職・ヤスクニ思想のいま~」と題したシンポジウムなどが行われ、約150人の参加者が集まった。韓国からの参加者も多く、「開かれた軍隊のための市民連帯」の朴錫珍(パク・ソクジン)さんや、親族が靖国神社に合祀されたことに対し、その取り消しを求めている韓国人遺族も参加した。 
 
 シンポジウムでは、東京大学名誉教授の高橋哲哉さんがオンラインで出席し、現代における政治家、自衛隊幹部と靖国神社との繋がりを指摘しつつ、「戦死した自衛官を国家的な慰霊顕彰の対象にすることは、戦死の悲しみを名誉と歓びに転化する『感情の錬金術』である」として、「国のために命を捧げることを讃える」という観念の危険性を主張した。 
 
 また、「あなたは祖国のために戦えますか?」というテーマに関連し、1990年に韓国軍に入隊した朴錫珍(パク・ソクジン)さんは、「韓国における徴兵制は、国防義務を果たす他に政治権力の維持に悪用されることがある」などと指摘。兵役中の状況を振り返りながら、軍隊が、韓国社会の民主主義を抑制する道具と化すことに抵抗した自らの経験を語った。 
 
 戦時中、日本の統治下のもとで多くの朝鮮人が動員された。李熙子(イ・ヒジャ)さんの父親は、日本に徴用された結果、命を落として靖国神社に合祀された。李さんは、父親の合祀を取り消すために日本で裁判を起こしたが敗訴し、未だにそれは叶わないでいる。こうした状況にある中、「私の代で合祀の取り消しが実現しなくても、次の世代にこの活動を繋げていきたい」として、韓国での提訴を視野に入れ、世代を超えて合祀問題に取り組む決意を語った。 
 
 靖国合祀問題に限らず戦時下における当時の日本の様々な行為が、人権を蔑ろにしたものであったと指摘されており、現在、日本とアジア諸国の間に大きな歪みを生み出している。同集会ではこうした歴史認識問題に関わる諸団体が各々の活動を紹介した。 
 
 「日本軍『慰安婦』問題解決全国行動」の木瀬慶子さんは、日本政府が強制性を否定している「慰安婦」問題の解決を図る取り組みを説明するとともに、中国人元「慰安婦」の遺族が、日本政府に対して謝罪と損害賠償を求め、中国の裁判所に提訴したことを紹介。「長生炭鉱の水非常を歴史に刻む会」の上田慶司さんは、1942年、山口県宇部市の炭坑で多くの朝鮮人労働者が亡くなった水没事故を説明し、犠牲者の遺骨収集活動の現状などを話した。また、民族問題研究所の金英丸(キム・ヨンファン)さんは、先月、世界遺産登録された佐渡金山について触れ、「佐渡金山が本当の意味で世界遺産となるためには、戦時中に朝鮮人が強制労働させられた事実を示すべきだ」とした。 
 
 まもなく戦後80年を迎えようとしているが、遺族らの怒りや悲しみは当時のまま、闘いはまだ終わっていない。 


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