2024年08月23日15時57分掲載
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難民
溢れるヘイトスピーチ 埼玉ではクルド人排斥を訴えるデモも
〈クルド人に対するヘイトの実情〉
皆さんは、SNSの検索欄で「クルド人」と入力したことはあるだろうか。筆者が実際にX(旧ツイッター)で試したところ、クルド人に対する数々のヘイトコメントを確認することができた。こうしたSNS上におけるクルド人を標的としたヘイトコメントは、Xでトレンド入りすることもある。
クルド人を標的としたヘイトは、昨年の入管法改定に向けた議論が活発化する中で増加。瞬く間に真偽不明な情報が飛び交うようになった。なぜクルド人がこのような状況に置かれているのか、それを理解するためにはまずはクルド人そのものについて知る必要があるだろう。
〈そもそもクルド人とは〉
クルド人は“国を持たない最大の民族”と呼ばれている。そのため、この地球上にクルド人が主体となる国家は存在しない。クルド人は、トルコ、イラン、イラクなどにまたがった山岳地帯に居住しており、推定人口は三千万人。その半数は、トルコ国内で生活しているとされているが、長年、トルコ国内においてクルド人は弾圧の対象となっており、多くのクルド人が海外への避難を余儀なくされている。現在、親族を頼るなどして日本に避難してきたクルド人は約2000人いるとされており、その多くは埼玉県の川口市や蕨市に集住し、コミュニティを形成している。この一帯は、「ワラビスタン」と呼ばれることもあるそうだ。
迫害から逃れてきたクルド人たちは日本で難民申請をするケースが多いが、“難民鎖国”と揶揄される日本の難民認定率は非常に低い状況にあり、これまで日本で難民認定を受けたトルコ国籍のクルド人はたった一人しかいない。
〈難民の定義〉
1951年に採択された難民条約の第1条において、難民とは「人種、宗教、国籍もしくは特定の社会的集団の構成員であることまたは政治的意見を理由に迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有するために、国籍国の外にいる者であって、その国籍国の保護を受けられない者またはそのような恐怖を有するためにその国籍国の保護を受けることを望まない者」と定義されている。
こうした状況について、長年、クルド人難民の支援を行う周香織さんは「日本にとってトルコは友好国であるため、トルコ国籍を持つクルド人を難民として認定してしまうと、トルコ政府はクルド人への迫害を行っていると、日本政府が認めることになってしまう。だから、日本政府はクルド人を難民として認定したがらないのだろう」と指摘する。周さんが支援するクルド人難民のデニスさんは現在4回目の難民申請中であり、今も仮放免の立場にある。昨年、入管法が改定されたことにより、難民申請中も本国への強制送還が可能となったため、デニスさんをはじめとする仮放免者たちは、これまで以上に強制送還に怯えながら生活しなければならなくなった。
〈ヘイトは街中でも起きている〉
クルド人を標的としたヘイトの問題はSNS上だけではない。昨年頃から、クルド人が集住する川口や蕨で“クルド人排斥”を訴えるデモ行進が行われるようになった。8月16日にも蕨市内で市民団体による同様の趣旨のデモ行進が実施される予定だったが、台風接近に伴い、延期となった(同団体のXアカウントは「9月に延期します」と投稿)。こうした団体によるデモが実施されると、大量の警察官が動員されるほか、カウンターデモも同時に行われるため、現場は物々しい雰囲気に包まれる。
〈どうすればヘイトを取り締まれるか〉
こうした中、デモ行進が行われる川口市や蕨市において、ヘイトスピーチを含む差別禁止条例の制定を求める動きもある。この活動に取り組んでいるのは、埼玉県内に住む市民有志で作る「埼玉から差別をなくす会」(今年3月に結成)。現在は世話人である中島麻由子さんら3人のメンバーが所属している。なくす会は、SNS上でのヘイト被害の実態を取りまとめるなどし、関係自治体に対して早急に対策を講じるよう求める要請活動などを実施している。
中島さんは、「ヘイトスピーチを取り締まることは、マジョリティ側の責任である」と話す。なくす会は、川口市などで“ヘイトデモ”が実施される際は、実際に現地に赴き、通行人に対しリーフレットを配布するなど、ヘイトをなくすための啓蒙活動を行うこともある。なくす会のメンバーたちは、「(ヘイトスピーチの問題は)いま終わりにしないといけない」と口を揃える。
ヘイトの被害者をこれ以上、増やさないためにも、行政による“ヘイト対策”は急務である。
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