2024年08月30日20時33分掲載  無料記事
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アジア

タイは「ジェンダー先進国」になれるのか 性適合手術希望の海外来訪者が増加 宇崎 真

 先日ある日本人が「タイで性適合手術を受けたい」とバンコクにやってきてそのお手伝いをすることになった。本人は友人(女性)と同棲しているが、どうしても「男性になって結婚したい」とのことだった。いわゆる「FTM」Female to Maleの手術を受けたいということだ。「日本でも可能だがタイの方がそのための環境、条件が整っている。経済的に精神的に受け容れやすいのです」とも言った。日本はもとより周辺国、遠くは欧米からも性適合手術を受けにタイを訪れるひとは増加している。 
 この傾向はタイのLGBT権利擁護の法的整備が進んできたことも反映している。今年6月には同性婚を認める「結婚平等法」が国会下院で可決され(上院は3月に可決)セター首相(当時)は「タイ社会の総意に基づく勝利であり誇らしい」と述べた。 
 筆者がLGBT、LGBTQに関心を持つようになったのはおよそ40年前フィリピンでの体験であった。TV番組企画で何度か NPA(新人民軍) の従軍取材を試みたときである。1969年ルソン島の農村部で結成されたNPAは80年代勢力を拡大し、マルコス独裁政権を打倒するピープルパワー革命(1987)直後の最盛期は約3万の兵力を有していた。 
 首都マニラでも簡単にコンタクトが取れた。取材交渉の窓口になったのはフィリピン大学のたおやかな女子学生だった。だがそのハキハキとした聡明なひとは実はトランスジェンダーであった。そこから筆者のLGBTQへの理解の第一歩が始まった。 
 テレビ通信社(NDN 日本電波ニュース社)での22年の勤務のあとフリージャーナリストとなり、生活拠点を東京からバンコクに移してからは必然的にLGBTQを取材する機会は増えそれに応じて多角的に見れるようになった。トランスジェンダーの「美人コンテスト」の密着取材もしたし、教育現場、研究機関、医療の世界、選挙と議会政治、スポーツ、ファッション美容、犯罪と刑務所と様々な分野で刺激的かつ有益な見聞をさせてもらった。なんでもタイにおける性的マイノリティーの人数は国民の8%(500万人)を占めるという。 
 それなりに長く見てきたこの現代的テーマで人間社会の本源に関わる現象をシリーズで書いていきたいと思う。        (つづく) 


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