2024年08月31日00時05分掲載  無料記事
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人権/反差別/司法

日弁連がクルド人へのヘイトスピーチ問題に警鐘 SNS上の投稿はほぼデマ

 在日クルド人に対するヘイトスピーチの蔓延に警鐘を鳴らすべく、日本弁護士連合会が8月26日に東京都内で緊急集会を開催した。ここ1年ほどの間、埼玉県川口市周辺に居住するクルド人に対し、SNS上での激しい誹謗中傷が繰り返されており、このような状況に在日クルド人で、「日本クルド文化協会」代表理事のチカン・ワッカス氏は、「SNS上の投稿はほぼデマ」と実態を語った。 
 
◯ ヘイトスピーカーは川口市には住んでいない 
 集会では、埼玉県川口市周辺の在日クルド人の支援活動に取り組む「在日クルド人と共に」の温井立央代表理事が登壇。「川口の人口構成を見ると、クルド人が全体に占める割合は1パーセントに満たない」とした上で、「外国人というマイノリティに対して、マジョリティが烙印を押す。そのことが差別と偏見を助長している」と現状を問題視した。また、支援団体もヘイトスピーチの対象となっているとし、「掛かってきた電話の相手に、川口市に住んでいるのかと尋ねると、住んでいないという。YouTubeで見ただけで、このようなことをしており、これには言葉を失う」と、ヘイトスピーカーの多くが、住民ではなく市外に住んでいる現状に対する思いを述べた。 
 
◯クルド人が一番怖いのはスマホ 
 また、長らくヘイトスピーチに関する取材を重ねてきたジャーナリストの安田浩一氏は、「今、クルド人が一番怖がっているのは、スマホだ」と語る。一挙手一投足全ての行為がネット上にアップされてしまうため、スマホが向けられ撮影されるのではないかと、後ろを振り返りながら歩いているという。さらに、「(このような差別は)これまでも外国人に向けられてきたもの。在日コリアン、中国人、ブラジル人であったり、それが今はクルド人であるということ。しかし、差別するプレーヤーは変わっていない」と、特定のプレーヤーによって繰り返されてきた外国人差別の連鎖を断ち切る必要性に触れた。 
 
◯クルド人の難民認定は一人だけ 
 日本の難民認定率は他の先進国と比較しても異常に低く、クルド人については、特にそれが顕著である。クルド人が特に日本で難民認定されづらい理由について、クルド難民弁護団の大橋毅弁護士は、「トルコにおける強烈な同化政策が根底にある」と語った。トルコのエルドアン政権がクルド勢力を政治的な対抗勢力と定め、広範にテロリストを定義して、一部のクルド人をそこに当てはめようとしているという。トルコと友好関係にある日本は、テロ対策で協力しなければならない側面があるため、日本政府はトルコ政府によるクルド人への弾圧を人権侵害として指摘できないという実情がある。これにより、日本のクルド人に対する難民認定率が低くなっているわけである。それでも、2022年7月に日本でもトルコ国籍のクルド人一人が難民として認定されたが、これについて大橋弁護士は「裁判でやっと認められたもの」とし、クルド人への難民認定が進まない日本の入管政策を問題視した。 
 
◯刑事罰を付した反差別条例を 
 法的な観点からヘイトスピーチの問題点を指摘し続けてきた師岡康子弁護士は「ヘイトスピーチやヘイトクライムは差別であるから、国と地方公共団体に止める責任がある」と明言。国に対しては、日弁連から差別禁止法を作ることを求めているため、私からは市民の安全を守るべき地方公共団体に対して、条例を作ることを呼び掛けたい」とし、2019年12月に川崎市で制定された反差別条例と同様に、刑事罰を付した条例の制定を求めた。 
 
◯ヘイトスピーチは根絶されなければならない 
 集会を主催した日弁連の野呂圭副会長は、「2016年4月にヘイトスピーチ解消法が制定されたが、不当な差別的言動を禁止する規定はなく、被害者救済の実効性が乏しいものとなっている」と指摘。その上で、「クルド人へのヘイトスピーチ問題を通じて、日本で行われているヘイトスピーチの実態を直視し、蔓延を食い止めたい」と語った。 
 
 
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 これまで、延々と繰り返されてきた外国籍の人々へのヘイトスピーチ。これを実効的に防ぐには、当事者や住民による強い反対の声が必要となる。各自治体レベルでヘイトスピーチを真剣に根絶する意思を持って、川崎市で制定された反差別条例のように、罰則付の条例を作っていくことが求められている。 
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