2024年09月02日17時33分掲載  無料記事
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アジア

屋台の廃油から航空燃料が生まれる?! 停滞のタイ経済を救うのか 宇崎 真

 このところタイの首都バンコクのストリートフードの屋台が活況を呈してきた。大衆食の揚げ物に欠かせない食用油はさんざん使った後は捨てていた。その廃油が売れるようになったのだ。業者がせっせと買取りにやってきてくれる。シーロム通りで鶏唐揚げ、ロティ(スイーツの一種)、バナナの揚げ物、揚げパン、ドーナツ等の屋台通りにも大手のエネルギー企業バンチャック社が廃油を求めてやってくる。 
 1㎏の廃油が20バーツ(約86円)だ。一軒の屋台の使用済み食用油はおよそ10kgから20kgとして200バーツ(860円)から400バーツ(1720円)の売上げ増となる。タイの改定最低賃金が日額370バーツであることを考えれば屋台にとっては有難い収入増である。 
 地球温暖化がさらに深刻となり、二酸化炭素の排出を減らせというのは国際コンセンサスとなって久しい。日本を含む各国航空会社は SAF(Sustainable Aviation Fuel 持続的な航空燃料)がその目的にかなう戦略的物資と判断し獲得競争が展開されている。使用済みの食用油を特別な機械と方法で精製すればSAFが出来る。 
 この分野で欧米や日本が研究開発でリードしてきたが原材料の確保が難しい。その点東南アジア各国、特にタイ、ミャンマーでは屋台、レストラン、家庭で食用油が日常的に使用されておりその消費量は極めて大きい。 
 政情安定、輸送網の整備などを考慮すればなかでもタイが原材料確保の面で一番有望だというわけだ。 
 それと食用の廃油以上に農業廃棄物から航空燃料を製造する技術が急速に開発されてきており、この点でもタイは有望視されている。特にサトウキビである。タイのサトウキビ生産量はこの数年1000万トンから1500万トン(気候の影響やコロナパンデミック災害の影響で上下)で推移してきたが世界有数のサトウキビ生産国/輸出国であるのは変わらない。 
 サトウキビを圧搾し汁を搾り出したかす(バガス)が優良なSAFの原料となる。技術開発が進みSAFは従来の航空燃料(ケロシン=水分が少なく純度が高く高空でも凍らない)と混合使用が可能だ。 
日本航空は「2030年に航空燃料の10%をSAFにする目標」を掲げている。需要増を見込んで東レ(タイランド)は本格的にサトウキビ精製―SAF生産に力をいれている。 
 課題はサトウキビからのSAF製造は化石由来の石油の精製でつくられる航空燃料よりもずっと経費がかかる(二倍から数倍)ことだ。 
 コーンとかヤシといった農産物や廃プラスチックからもSAF製造は可能であるが、コストがまだとても見合わないとされる。だから現実ビジネスとして成り立つのは食用の廃油とサトウキビからのSAF生産である。タイは急にその両方で有望な国として注目されているのである。 


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