2024年10月02日22時31分掲載  無料記事
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反戦・平和

「言論・表現の自由」を敵対視する石破新首相 特定秘密保護法案反対は「テロ行為」、自衛隊のイラク活動取材に自粛要請

 石破新首相の政策について、私はくわしいことは知らない。ただ、これまでの彼の言動で二つ、記憶に残っていることがある。2013年に安倍政権が成立を急ぐ特定秘密保護法案に反対する国会周辺の街頭行動を、自民党幹事長の石破は「テロ行為」と批判した。2004年にイラクに自衛隊を派遣した小泉政権の防衛庁長官だった石破は、報道機関に現地取材の自粛を要請した。憲法で保障された「言論・表現の自由」を敵対視する政治家であることは間違いない。(永井浩) 
 「平和国家」日本を戦争のできる「普通の国」にすることに執念を燃やす安倍首相は、2013年に特定秘密保護法案を提出した。 
 同法案に対して、「国民の知る権利が奪われる」「表現の自由が制約される」「民主主義の破壊につながる」などと、多くの国民やメディア、弁護士、学者、文化人らが反対の声を上げると、石破は同年11月29日の自身のブログでこう述べた。 
 「今も議員会館の外では『特定機密保護法絶対阻止!』を叫ぶ大音量が鳴り響いています」、「主義主張を実現したければ、民主主義に従って理解者を一人でも増やし、支持の輪を広げるべきなのであって、単なる絶叫戦術はテロ行為とその本質においてあまり変わらないように思われます」。 
 この発言に日本弁護士連合会などは、「憲法の保障する表現の自由を封殺しようとする」ものと厳重抗議するとともに、「その具体的危険性が一層明らかになった」として、法案の廃案を改めて強く求めた。しかし法案は同年末、野党の反対を押し切って成立した。 
 
▽「新しい戦前」と憲法の空洞化 
 特定秘密保護法案に先立ち、2003年に米国のブッシュ政権が「対テロ戦争」と称してイラク侵攻を開始すると、小泉首相は「国際貢献」のためと主張して自衛隊のイラク派遣を決定する。自衛隊の初の「戦地」派遣である。憲法との整合性が問われる、戦後日本の安全保障政策の根本的転換を意味した。 
 憲法上の問題点をあいまいにしたまま、巨額の税金をつぎこんで展開される自衛隊の「人道復興支援」活動の実態を明らかにすることは、国民の「知る権利」にこたえるメディアの責務だった。 
 ところが陸自先遣隊の出発がせまった2004年1月、石破防衛庁長官は、防衛庁の記者クラブ加盟の報道機関に対し、「現地での取材は可能なかぎり控える」よう要請した。理由は「部隊の安全確保のため」とされた。 
 同庁は報道各社に配布した要請文で、報道により「円滑な業務遂行を阻害すると認められる場合」には、以後の取材は断るとした。自衛隊のサマワ入りの到着日時、行き先は極秘にされた。 
 日本新聞協会と民放連は防衛庁に「適切な情報提供」を要請したが、政府は、自衛隊のサマワでの活動に関する情報提供は、東京の防衛庁でのブリーフィングと同庁のホームページでおこなうと突っぱねた。アジア太平洋戦争中の「大本営発表」の復活を思わせるような情報統制である。 
 こうした報道規制にくわえて、新聞、テレビも、「非戦闘地域」とされていたサマワがきな臭くなってくると現地取材を放棄。自衛隊が任務を終えて撤収すると、政府発表のオウム返しで自衛隊の人道復興支援活動は「成功」と報じた。 
 2022年2月にロシアがウクライナに侵攻すると、岸田政権はこれに便乗して「今のウクライナ」は「明日の東アジア」と安全保障の危機を煽り、中国と北朝鮮の脅威、台湾有事を理由に大軍拡政策を打ち出した。それとともに「新しい戦前」への不安がひろがりはじめた。 
 岸田の後任の石破が、日本の軍事大国化路線を修正することはないだろう。そして、彼のこれまでの言動をふり返ると、新しい戦争への道は、さらなる言論・表現の自由の封じ込めによって地ならしされていく恐れがある。 


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