2024年10月06日10時41分掲載
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日消連ブックレット『香害と電磁波から子どもを守る』(加藤やすこ著)
この本は日本消費者連盟が発行するブックレットの最新刊で、一読してすごい本だなと思いました。内外の最新の知見と著者の実践を踏まえ、わかりやすく明快に、今何が起こっているか、その原因はどこにあるのか、ではどうすればいいのかが説かれている。おすすめの一冊です。著者は過敏症患者会「いのち環境ネットワーク」代表も務める環境ジャーナリストの加藤やすこさん。(大野和興)
不勉強でお恥ずかしいのですが、環境過敏症という言葉をこの本で初めて知りました。本書によると、環境過敏症にはさまざまの現れ方があります。本書のタイトルに入っている香害(こうがい)、電磁波、低周波音、振動、カビなどなどです。
これら化学的、物理的、生物的な環境さらされる中で、頭痛、呼吸困難、動悸、吐き気、めまい、重度の疲労感といったさまざまな症状が起こる。これを「環境過敏症」と総称し、専門の学会もできています。
一筋縄ではいかないのは、これらの要因が複合して体と心を襲う例が多くなっていることです。日本の研究者の報告では、電磁波過敏症発症者の80%は香害など化学物質過敏症を併発していると本書は警告しています。
問題が起こっているのは当然日本だけではありません。これも本書の情報ですが、カナダでは人口の3%が環境過敏症とみてよいとのことです。しかし重大なのは、子どもたちへの影響です。NPO法人日本消費者連盟は香害を市民運動として早期に取り組み、社会問題化してきた歴史を持っていますが、その原動力となったことの一つに、衣類にまとわりついた洗剤の香りが教室に充満し、ついに学校にいけなくなった子どもの存在がありました。
同連盟が香害110番を開いたら電話が殺到、2台用意した受話器がパンク状態になる事態がありました。まだ香害という言葉も知られてなく、被害者は社会に対して声を出すことができない時代でした。人知れず何かが起こっている、改めて深刻に受け止めた同連盟は化学物質問題に取り組んでいるグループ、団体と連携しながら、調査活動、政府関係機関との交渉、地方自治体・議員への働きかけ、洗剤メーカーへの申し入れ活動などを精力的に展開、香害を社会問題化してきました。
こうした積み上げのもとで、いま人びとを取り巻いている状況を重層的複合的に捉える視点が獲得されてきました。本書がテーマとしている環境過敏症という視点の重要性はここにあります。
社会問題としての認識も進みました。そしていま事態はより重層的複合的になり、複雑になっています。本書が最もページを割いて強調しているのーは、学校デジタル化に伴って深刻化している子どもたちの被害です。
デジタル教科書や学校無線LANから出てくる電磁波被爆が学校の中で人知れず広がっているのです。本書は国内だけでなく海外の調査報告や論文を豊富に紹介しながら、その影響が現時点でどこまで拡がっているか、その先に何が起こるかを明らかにしています。
本書によると、学校教育にデジタルを導入した先進地スウェーデンでは子どもたちの体調不良の増加と読解力の低下という現実に直面して、多額の国家予算をさいて子どもたちがペンと紙を使って学べるようにしようと動き出しています。
こうした情報が満載の本書は、問い・答えという形式をとっていて読みやすく、わかりやすく、お値段も「500円+税」とお得です。デジタル教科書拡大を国が強力に推進し、自治体が児童・生徒1人1台タブレット予算獲得競争に狂奔しているこの国で生きる子どもたちのために是非手に取って、広めて頂くことをお勧めします。
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