2024年10月13日15時54分掲載
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司法
【主張】袴田事件の無罪確定 問われる再審制度の在り方 えん罪を前提とした制度設計を
1966年に静岡県で一家4人が殺害された事件(袴田事件)に関して、死刑判決が確定した後の再審(裁判のやり直し)において、静岡地裁が9月26日に無罪判決を下した。これを受けて、最高検の畝本直美検事総長が10月8日に控訴を断念する意向を示し、袴田巌さん(88)の無罪が確定することとなった。
58年が経過した後に示された再審無罪。第一次再審請求からは、実に43年もの月日が経過しており、関係する人々が失った時間はあまりにも大きい。静岡地裁により無罪判決が確定した後、再審手続が長期間に及んでいる状況を踏まえ、市民からは検察の控訴を断念するように求める声が上がり、日本弁護士連合会(日弁連)からも同日中に上訴権を放棄するように求める会長談話が公表された。このような市民の声が、検察側が控訴を断念する上での判断材料の一つになった側面は大いにあるだろう。
(日弁連:会長談話)
https://www.nichibenren.or.jp/document/statement/year/2024/240926.html
今回の事件の再審無罪に関連して、再審法の改正を求める声が高まりを見せている。今年3月には、超党派の国会議員により再審法の改正を求める議員連盟が発足し、現在300人以上の議員が在籍。同議連は、袴田事件の再審無罪判決を見越して設立されたもので、今後同事件の無罪確定を受けて、再審法改正の流れが加速していくことが予想される。現状の再審法は再審手続の詳細が明確に示されておらず、このような法の不備が悪戯に審査を長引かせている側面があるため、この点について抜本的な改革の議論が進められることになるであろう。
日本は、先進国で死刑制度を維持している数少ない国の一つである。死刑の判決が下され、刑が執行された後にえん罪であることが発覚した場合、命を取り戻す術などあるはずがない。いくら「三審制」による慎重な司法判断がされているとはいえ、今回のようにえん罪の可能性を完全に排除することができない以上、死刑制度は廃止の方向で議論を進めるべきである。えん罪が発生しないという前提に立つのではなく、えん罪の可能性を踏まえた制度の在り方を議論していく必要があるといえるだろう。
なお、今回の再審無罪の結果を受けて、日弁連や国際人権団体であるアムネスティ・インターナショナルなどが談話や声明を公表。再審法の改正と死刑制度の廃止を強く求めている。
(日弁連:会長談話)
https://www.nichibenren.or.jp/document/statement/year/2024/241009.html
(アムネスティ インターナショナル日本:声明)
https://www.amnesty.or.jp/news/2024/1011_10471.html#
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