2024年10月23日22時16分掲載  無料記事
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核・原子力

【たんぽぽ舎発】.第7次エネルギー基本計画のここが問題 (下) 原発が二酸化炭素を出さないことなどあり得ない  山崎久隆

 基本計画ではカーボンニュートラルという言葉も飛び交うが、化石燃料を燃やすタイミングを殊更問題視するために使っている用語であり、原発が極めて大きな環境汚染源であることを見えなくさせる言葉遣いだ。本気で達成するための議論ではなく、原子力推進体制を再構築することを目的に「あらゆる政策を動員する」ために用いられるのが「脱炭素」だ。 
 
 グリーントランスフォーメーション(GX)とは、化石燃料中心の産業や社会構造を、クリーンエネルギー中心の構造に転換していく取り組みのこと。地球温暖化による環境課題を解決し、持続可能な社会を作ることを目的とする、という名目だ。 
 
 しかし原子力開発の暗部を知らなかった時代に「無限に安定的に供給でき廃棄物も少ないバラ色のエネルギー」として原子力を想像していた時代ならばいざ知らず、度重なる原発事故と開発による放射能汚染の現実を知った今、「クリーンエネルギー」と言った時点で、完全に破綻した理念である。 
 
 原発が二酸化炭素を出さないことなどあり得ない。 
 核分裂時に出ないことを殊更強調しているだけだ。ライフサイクルにおける原発の排出原単位は極めて大きいと考えられ、キロワット当たり180〜288グラムという研究もある。なお国は19〜20グラムとしている。 
 LNG火力は470グラムで、原発との差は2倍程度というのが実相。とりわけ三分の二の原発が止まっている日本の場合、それらは単に二酸化炭素を出すだけの存在になっている。 
 
 
3.徹底した省エネルギーこそが最大の政策だ 
 
 「第7次エネ基」において、政府・経産省は、原発の再稼働と新増設を含むGX法の完全反映を目指す。 
 「エネ基」を議論している資源エネルギー庁の「基本政策分科会」では原発推進意見のオンパレード。その前提としての電力需要増の議論が席巻している。 
 これに対して実行可能で最も確実な政策は、徹底した省エネ・節電をおこなうことである。 
 
 第6次エネ基では年間の電力消費量について2050年では30〜50%も増えるのに2030年までは10%以上減るという、呆れるほど矛盾した見通しを出している。 
 電気自動車、データストレージ(データセンター)、AI(人工知能の活用)など、新たな電力多消費産業の開発により電力消費量は増加するというのが政府の基本的認識のはずだが、2030年の再生可能エネルギー電源比率および原子力発電比率を極めて高く設定するトリックとして、電力消費量の分母を小さくする偽装を用いたためだ。 
 
 「第7次エネ基」では、もはや「偽装」ではなく現実問題として 
2035年および50年の「電力消費量見通し」を引き下げなければ、いわゆる「目標値」を達成できないことになる。 
 分母を減らすということは消費電力量の大幅な削減、すなわち省エネしか方法はない。 
 
 再エネの導入規模も大幅な上方修正が迫られることになる。 
 この場合、大量の再エネを安定供給するため、2つの施策が必須となる。 
 1つは広域連系の拡大、もう一つは電力貯蔵システムの構築だ。 
 また、将来は再エネの拡大しか道はないことは明らかだ。 
 
 再エネはどうしても出力変動を免れない。そのため貯蔵システムの構築以外にも電力のバックアップシステムが必須となる。 
 まだ火力発電の役割があるとしたら、この点である。 
 
 また、バックアップを従来の蓄電池に依存するのは不安定要因がつきまとう。価格の面や供給力にはまだ限界があり、さらにレアメタル資源の偏在、国際情勢に大きく左右されること、今後蓄電池市場が高騰することも考慮しなければならない。 
 
 当面は火力発電によるバックアップが不可欠になるのである。 
 その火力はガス火力発電。エネルギー効率を85%以上に高め、温排水や二酸化炭素排出を極限まで減少させる技術が必須になる。 
 廃熱も回収し使い尽くすシステムだ。この技術は世界中で必須になる。日本が海外に売り込める技術になるだろう。(了) 
 
(たんぽぽ舎共同代表) 
(2024年10月18日たんぽぽ舎発行「金曜ビラ」494号より) 


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