2024年10月26日19時15分掲載
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中国
経済成長の深部を描く中国映画『飛昇』FLY TO TRNCSEND(1) 経済大国とAI帝国が出会った深センで何が起こったか 稲垣 豊
2010年、中国深センにあるiPhoneの巨大製造工場「富士康Foxconn(フォックスコン)」で13人もの若い労働者が、宿舎の屋上などから飛び降り自殺する事件が13件も相次ぎました。
フォックスコンは台湾資本の鴻海精密工業の中国現地工場で、創始者のテリーゴウ(郭台銘)は謝罪して再発防止の施策を約束しました。しかし若い労働者らを自殺に追い込んだ軍隊式管理や長時間の単純労働などは相変わらずのままだと言います。
ドキュメント映画《飛昇》は、2010年に飛び降り自殺した13人のうち何とか命を取り留めた17歳の田玉さんを撮った作品で、2014年に私家版として公開されました。iPhoneがどのような過酷な労働者管理下で製造されているのか、そしてそこで働く労働者らの心の声が記録されています。
この田玉さんを支えてきたお父さんが急病で多額の治療費が必要となり、急遽その支援のために2024年10月に早稲田にある在日中国人のサロン「東京人文論壇」で治療費カンパのための無料上映会が開かれました。
10月27日18〜21時の時間帯でもう一度上映会があります。映画は中国語ですが英語の字幕がついています。上映後の解説などは中国語オンリーになると思いますが、もし映画に興味があり、ご支援いただける方がいましたら、下記より参加を申し込んでください。
申込み先(中国語or英語)
https://x.gd/kHy6D
以下は、そこで配布された資料の翻訳です。けっこう長いので、何度かに分けて投稿します。
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【事件の概要】
1)田玉(TianYu)は、フォックスコン(富士康)工場で連続して発生した労働者の飛び降り自殺の生存者の一人です。彼女はビルから飛び降りて半身不随の後遺症がのこり、社会的な関心や支援が集まりましたが、いまだに貧しい生活を送っています。 彼女はいまも努力して、なんとかまともな生活ができるよう頑張っています。
2)田玉の父親の田建党と母親、そして田玉の妹は、田玉と障害を持つ弟を養うために過酷な農作業に励んできた。父親は過労がたたり、重度の疾病を発症してしまい、いまはカンパなどを頼りに治療に専念せざるを得ないのです。
3)フォックスコンで働く労働者らが続けて自殺したのは、労働者に責任があるわけではなく、労働者を孤立化させ、社会的互助の関係を断ち切ったフォックスコンの軍隊式管理によって引き起こされたものです。田玉が飛び降り自殺を図るきっかけになったのは、フォックスコンの管理職が、まだ17歳だった田玉に給与支払い用のカードの発行を拒否したことでした。一銭の持ち金もなく、誰に助けを求めていいのかも分からなかった田玉は、ついにビルから飛び降りたのです。
4)田玉の父親は医療保険に加入していますが、治療を受けるにはまず治療費を支払ってから、後日払い戻しされる仕組みで、しかもすべての治療が保険適用ではありません。水滴籌〔中国国内の治療向けクラウドファンディングシステム〕は手数料がかかりますが使いやすい募金ツールです。しかし一部の国ではこのツールにアクセスすることは難しいのです。
5)中国では厳しい政治状況が続いており、草の根労働運動は基本的に壊滅状態にあり、外国の組織や団体からの援助に対して中国政府は非常に警戒しています。そのため、私たちは個人や小さなグループという立場で、真実のストーリーを周囲の人々に伝えることで、個人によるカンパを募り、個人的なルートを通じて田玉と直接連絡を取っている友人を通じて彼女を支援したいと考えています。
(つづく)
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