2024年11月02日11時59分掲載
無料記事
http://www.nikkanberita.com/print.cgi?id=202411021159576
欧州
代理母出産は本当に違法なのだろうか ~ チャオ!イタリア通信(サトウノリコ)
10月25日、ブエノスアイレスの空港で二人のイタリア人とアルゼンチンの女性が出国を止められた。二人のイタリア人は、10月10日生まれた生後15日の女児を連れてイタリアに帰るところだった。出国を止められた主な理由は、アルゼンチン人の女性にあった。彼女は、イタリア人カップルのために、代理母として女児を出産したからだ。
イタリア人カップルと彼女の間では、女児はイタリア人カップルの元でイタリアで育てられるという合意ができていたそうだ。イタリア人カップルは男性同士のカップルで、フェイスブックを通して、この代理母の仲介者とコンタクトを取ったとのこと。この出産で、イタリア人カップルは、彼女に5,500ユーロを支払ったという。
捜査の対象は、この3人というよりも代理母をお金と引き換えに提供する組織にあるようだ。ただ、イタリアでは、10月16日から代理母を禁止する法律ができており、それは国内だけでなく国外でも適用される。そのため、このイタリア人カップルはイタリアに戻ったら、法的に起訴されるリスクがあるということだ。
彼女はアルゼンチンの都市ロサリオ出身で、29歳。すでに18歳の時にはお金と引き換えに卵子提供を行ったと告白している。また、ロサリオには自分のようなお金を目的として卵子を提供したり、代理母になる若い女性がいると話している。アルゼンチンでは、代理出産は規制がないのと、貧困によって、こうした問題が起こるのだろう。
アルゼンチンの地元紙によると、この組織は米国とのつながりを持って活動しており、検査と治療を担当し、アルゼンチン都市レコレタの裕福な地区にアパートを借りて、彼女を1年間住まわせ、医療保険にも加入させたという。
今回の件は、同性カップルによる海外での代理母出産という問題だが、10組に1組の割合で同性カップルが、海外で養子縁組をする傾向にあるという。同性カップルが、子どもを持って家族を作っていくという傾向が年々増えているのだ。
また、イタリアでは、年間約3000組のカップルが子どもを妊娠するために海外に行くという統計がある。年間約14000件の人口授精出産のうち、約3000件が海外で行っているのだ。
イタリアの著名な婦人科医アントニーノ・グエルミーノ氏は、「結局、無限の待機リストに載り、お金を使い、国の医療制度では支援を見つけることができず、海外へ行くことを余儀なくさせられる」と言っている。
メローニ首相は、代理母出産を「レンタル子宮」「子宮貸し」として強く非難しているが、それだけではない、複雑な問題がある。子どもを持ちたくても持てない人たち、何年間待っても、何も支援がなく、海外へ行かざるを得ないカップルたち。そして、こうした状況や貧困を利用する組織などなど。
話は別かもしれないが、子どもを産んでも最後まで責任を持って育てられない親もいる。このイタリア人カップルは罪に問われる可能性が大だが、きちんと女児を最後まで育てることができるなら、それはそれでいいのではないかと思うのだ。どの子宮から生まれた子どもでも、子どもを望んでいる人、きちんと育てる人の元で育つのが、子どもの幸せだと思うのは、一人よがりだろうか。
Copyright (C) Berita unless otherwise noted.
日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。