2024年11月13日22時11分掲載
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中国
■経済成長の深部を描く中国映画『飛昇』FLY TO TRNCSEND(3) フォックスコン、社長の個人秘書を労組委員長に任命し自殺した労働者を非難 稲垣 豊
■フォックスコン(富士康=鴻海ホンハイ)の事件(〜2022年)
1988年10月、郭台銘が深圳にフォックスコンの製造拠点を設立。
2006年、労働者がフォックスコン工場での「体罰のように12時間も立ちっぱなし」といった搾取労働を暴露。それまでフォックスコンには労働組合がなかったが、深圳市政府と深圳市総工会の圧力を受け、2006年末に地域の総工会労働組合連合会がフォックスコンで働く118人の労働者とフォックスコン労組を組織化。
年明けの2007年になるとすぐにフォックスコンは社長の個人秘書である陳鵬を労働組合の委員長に任命し、労働組合を統制しはじめた。彼女は現在も労働組合の委員長を務めており、2010年の連続飛び降り自殺事件の際には事件に関する調査の実施をおこなわず、自殺した労働者を非難する発言をしている。2020年には国から全国模範労働者の称号を授与されている。
2007年に〔Apple本社が実施した〕iPodとiPhoneの委託メーカーへの監査で、フォックスコン社はほとんどの分野でコンプライアンスを遵守しているとされたが、いくつかの問題点が確認された。
2010年1月以降、フォックスコンでは従業員の自殺が相次いだ。2010年3月17日、賃金が支払われないことを苦にして、宿舎の建物から飛び降り自殺を図った田玉が一命を取り留めた。報道では14人の従業員があいついで自殺を図ったとされたが、実際の発生件数はそれ以上。というのも14人が自殺を図った後、メディアはこの件についての報道を禁止されたからだ。2010年6月、スティーブ・ジョブズはフォックスコンについて「すばらしい」、「搾取工場ではない」と弁護する発言をしている。その年、香港、台湾、中国本土の大学教員とその学生たちがフォックスコンに関する調査報告書を発表し、時間外労働、軍隊式管理、学生労働者への虐待などの問題を暴露した。それ以来、フォックスコンの世界各地の生産拠点で、労働者が飛び降り自殺が相次いだり、ビルの屋上などで自殺をほのめかしつつ労働環境の改善や経済補償に関する要求を行う闘争方式が発生した。
2010年7月、フォックスコンは自殺防止ワーキンググループ、24時間ケアセンター、ケアホットラインを設置したが、ホットラインはプライバシーを欠き、労働者に対する管理を強化する手段となった。フォックスコンは同時期に工場の外壁に飛び降り防止ネットを設置。
2010年11月、広東省佛山市のフォックスコン普立華工場では、低賃金への抗議とともに、内陸部への工場移転に対する不満から、数千人がストライキを行った。
2011年10月に掲載された「ニューヨーク・タイムズ」の報道は、批判の一部を裏付ける証拠を引用した。 アップルが公正労働協会(Fair Labor Association)に委託して実施した2012年の監査によると、労働者は賃金が上がらないまま最大34時間の非人道的な時間外労働を日常的に課せられており、労働災害や自殺が多発している可能性が示唆された。香港を拠点とするNGO「Students & Scholars Against Corporate Misbehaviour:SACOM」は、フォックスコンの従業員の待遇について多くの否定的なレポートを書いている。これらの報告書では、フォックスコンの従業員に対する待遇が2012年の公正労働協会の監査報告書よりもはるかに悪いことがしばしば指摘されている。
2012年1月2日、武漢フォックスコンの幹部は、600人の労働者を台湾宏碁公司向けのコンピューターケースを製造する新しい生産ラインに移動させることを決定した。約150人の労働者が工場の3階屋上に集まり、軍隊式管理と劣悪な労働条件に抗議するため、一斉に飛び降り自殺を図ると叫ぶ事件が発生した。
2012年9月23日23時頃、山西省太原市のフォックスコン・アップル工場で大規模な争いが発生し、千人を上回る労働者が警備員を殴り、工場のインフラを破壊する事態が24日午前3時まで続いた。この争いで40人以上が負傷した。
2012年10月5日、鄭州フォックスコンで3000人から4000人が参加するストライキが発生した。ストライキの直接のきっかけは、フォックスコンが従業員に休日の残業を義務付け、非常に厳しい新たな基準を提案したことであったが、同社は事前に対応する技能訓練を実施しておらず、従業員が基準を満たす製品を生産することはほぼ不可能だったことに起因する(注:不良品は労働者のペナルティになる)。
2012年10月、フォックスコンは山東省煙台市の工場で14歳の児童労働を実習生として短期間雇用していたことを認めた。
2012年10月、26歳の張廷振は1年前の工場事故で感電して転倒した。治療手術で脳の大部分を切除したことで記憶を失い、会話や歩行ができなくなった。彼の父親が補償を受けようとした際、会社は70キロ離れた恵州の病院で障害認定検診を行わなければ治療費の支出を止めると恫喝した。医師は移動途中での脳溢血を心配したが、フォックスコンは労働法規通りの対応を求めた。2014年、裁判所は張廷振が補償を受けるためには70キロ離れた恵州での検査を受ける必要があるとの判決を下した。フォックスコンの提示した和解案は拒絶された。
2013年1月、フォックスコンのシャトルバス2台が衝突し、7人が死亡、20人以上が負傷した。
2013年12月、重慶のフォックスコン従業員が低賃金に抗議してストライキを打った。
2014年3月、河南省鄭州から天津工場に異動したフォックスコンの労働者約1,000人が、使用者が手当支払いの約束を守らなかったことに抗議し、数日間ストライキをうつ。
2015年2月、中華全国総工会の幹部である郭軍は、フォックスコンが従業員に残業を強要し、過労死や過労自殺を招いていると主張した。 郭軍はまた、違法な時間外労働は調査不足と甘い罰則が原因だと主張した。しかしフォックスコンは郭軍の主張に反論する声明を発表し、労働者はより多くの収入を得るために残業していると述べた。
2017年11月、「フィナンシャルタイムス」は河南省のiPhone X工場で複数の学生が1日11時間働いており、週40時間労働に違反していると報じた。フォックスコンはその後、実習生による違法な時間外労働を停止したと発表した。同年9月、同工場では3000人の学生工を採用していた。
2020年11月16日午前8時、成都のフォックスコン工場の派遣労働者約1000人がフォックスコンのエリアCの正門に集まり、派遣会社が支払わない手当や返還金の未払い問題の解決を要求した。当局は100人以上の警察官を配備し、午前11時頃、派遣会社とフォックスコンとの問題交渉のため、警察は十数台の大型バスを派遣して、労働者を他の場所に移送するために、労働者は警察のバスに乗せられた。
2022年5月、重慶のフォックスコンで約1,000人が賃上げを求めてストライキを行った。
2022年10月、鄭州フォックスコンの従業員は、ゼロ・コロナ政策と不当な労働条件から逃れるために、集団で徒歩で鄭州から逃避した。11月には鄭州のフォックスコンで数万人が暴動を起こし、フォックスコンが約束した手当の支払いを求め、従業員をだまして契約させたことに抗議した。
(つづく)
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