2024年11月14日12時27分掲載
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入管
永住許可の取消事由拡大 当事者の思いはいかに ガイドライン制定に向けて
今年6月の国会で成立した改定入管法に関して、突如として1月に俎上に乗った永住資格に関する取消事由の拡大。同法施行後は故意に公租公課の支払いを怠った場合に、永住資格が取り消され得ることになる。本件に関する国会審議の際に、当時の岸田文雄首相は「(永住許可取消の対象は)一部の悪質な場合に限られる」などと答弁したものの、この内容が法律に明記されたわけではなく、同法成立後もこの条項に不安感を募らせる当事者から、同法に反対する声が上がり続けている。
今年7月に20代から30代の永住当事者などが中心となって立ち上げられた「永住許可有志の会」。同会は、永住許可の取消事由拡大を進める改定入管法の廃止を求めつつ、併せて今後策定が見込まれるガイドラインについて、多様なバックグラウンドを抱える永住当事者の思いを反映した内容にするよう求めている。
同会のメンバーで、日本で生まれ育った米国籍の会社員エマさん(31)は、このような条項が示された際、「(アメリカ国籍であるから)アメリカで生活してと言われても、どのように生活すればいいのかわからない」と、日本以外の国での生活を強要されかねない状況に対して、不安な思いを抱いたという。さらにエマさんは、「今年7月に発表された在留外国人統計によれば、日本にいる約89万人の永住者の内、約11万人が未成年者で、私たちのように日本でしか生活したことのない永住者はすごく多いはず。しかし、そういう人たちがいるということが、そもそも知られていない。政府は、ガイドラインの制定にあたって当事者の声を聞くと言っているので、そのような当事者の声を届けたい」と、今回の法改定の影響を強く受ける当事者の声を届ける必要性に触れた。
さらに、イギリス国籍の父親を家族に持つリサさん(20)は、「私はイギリスと日本のミックスルーツで日本国籍であるが、この法律により海外ルーツの人々に対する差別が強くなるのではないかと感じた」と語る。リサさんは、「これまでも国籍などを理由に家族が入店を断られたことがある」とし、このような差別の助長に繋がり得る今回の法改定を「複数ルーツで成り立つ家族を無視したもので、怖いと思う」と、不安な胸の内を語った。その上で、「(複数ルーツの家族が)ただ日本で平和に暮らしていきたいだけであるのに、それを国が奪っていくのか」と、国の姿勢を問題視した。
永住資格の取消条項の拡大に関しては、今年6月に国連人種差別撤廃委員会が、「永住者に影響を与え得る」と、日本政府に対して書簡を送付。これに日本政府は「影響を及ぼすことはない」と回答した。このような日本政府の姿勢に対しては、「移住者と連帯する全国ネットワーク」がこれを問題視し、「根拠薄弱で、永住者およびその家族からのヒヤリングも一切ない」と反対声明を公表している。
当事者の思いを反映した制度の運用がされるよう「永住許可有志の会」は、change.org上でオンライン署名を展開中。同署名への賛同者を募るとともに、総理大臣や法務大臣などに宛てた要望書の提出を目指している。エマさんは「SNSなどを見ると、『帰化したらどうか』というような意見も見られるが、日本は帰化する際に、元の国籍を捨てなければならない。これは相当抵抗感がある。このような思いを、多くの人に知ってもらいたい」と、永住当事者としての率直な思いを語った。
同改定法は、2027年までの施行が予定されているが、当事者を置き去りにして制度が運用されるようなことがあってはならない。今後の動向が注目される。
◯ 永住許可有志の会
change.org:https://www.change.org/p/%E7%BD%B2%E5%90%8D-%E5%B8%B0%E3%82%8B%E5%9B%BD-%E3%81%AE%E3%81%AA%E3%81%84%E8%8B%A5%E8%80%85%E3%81%AE%E6%B0%B8%E4%BD%8F%E8%A8%B1%E5%8F%AF%E3%82%92%E5%8F%96%E3%82%8A%E6%B6%88%E3%81%95%E3%81%AA%E3%81%84%E3%81%A7 X:https://x.com/eijukyoka_2024?s=11&t=aHxo9EwFt8Ho_vnxRERX5AI
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◯ 移住者と連帯する全国ネットワーク
永住資格取消制度に関する反対声明
https://migrants.jp/news/voice/20241004.html
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